主任の非礼に家族が激怒

 

ある施設で職員の介助ミスが原因で転倒事故が起き、主任と相談員が家族に謝罪することになりました。ところが、時間になっても主任は現れず、遅れて来た主任は短パンTシャツという姿で「入浴介助が長引いてしまって」と言い訳をしました。激怒した家族は、施設長と理事長に「あんな無礼な職員を役職者にした経営者の責任だ」とクレームを訴え、経営責任にまで発展しました。今回は「接遇ゼロ職員は経営リスク」という観点で、接遇研修の方法を考えます。

 

 

 

■謝罪は接遇が最も重んじられる場面

家族が激怒したのは、謝罪という最も接遇が重んじられる場面で、約束の時間を厳守するという社会人として最低限のマナーが全くできていなかったことです。無礼な態度は責任追及の矛先を経営に向け、クレームは激しくなります。

 

 

なぜ本事例の介護主任は社会人としての基本的なマナーが備わっていなかったのでしょうか?

理由は一つです。学校で教わらず職場でも教わらなかったから知らなかっただけなのです。すると、PTやOTなど医療専門職や看護師でも、同じことが言えるかもしれません。

 

介護や医療ではサービス品質の考え方が、技術面に偏りがちで接遇をないがしろにする傾向があります。しかし、企業を見る消費者の目はその経営姿勢にも及びますから、接遇はサービス品質をお客様に伝える窓になっているのです。

 

 

 

 

■全職員に基本が身に付く職場の取り組みを

ある接遇研修の講師の元ホテルマンはこう言いました。「研修会でカタチだけの接遇を学んでも意味がありません。接遇は理解するものではなく身に付けるものですから。また上手なお辞儀よりも、細やかな気遣いができる方が大切なのです」と。元ホテルマンが指摘した介護事業所でよくある接遇研修の問題点は次の3点です。

 

 

1.散発的な研修会ではなく組織的・継続的な接遇改善の取り組みでなければ身に付かない。
2.難しい接遇技術の習得よりも最低限の基本動作を全ての職員に徹底すべき。
3.ほかの業界の接遇方法を真似るより介護職員に相応しい接遇方法を学ぶべき。

 

 

また彼は最後にこう言いました。「接遇は態度や言葉などのカタチではありません。”お客様は何を望んでいるのか”を、感じ取る能力を身に付けることです」と。では、具体的にはどのような取り組みが必要なのでしょうか?

 

 

 

■接遇向上の継続的な取り組みとは

業界団体などが開催する接遇の研修会に、施設から職員を1人参加させてもムダなのです。なぜなら参加した職員の接遇の知識が少し増えるだけで、全ての施設職員に対して研修ができる訳ではないからです。また、元ホテルマンの講師も指摘したように、研修に参加した職員自身も知識として覚えても実践できるようにはなりません。

 

 

接遇は研修で勉強するものではなく、施設の全ての職場の活動として定着させなければならないのです。具体的には、1年間職場ごとの小集団活動で取り組むのが最も効果的でしょう。たとえば、1ヵ月に1つの身に付けるべき課題を設定し、トレーニングシートを使った接遇訓練をします。これを1年間継続して初めて、全ての職員が最低レベルの接遇の能力を身に付けてこそ、組織全体としての接遇のレベルアップにつながるのです。

 

 

施設には接遇が全くできない「接遇ゼロ職員」が必ず数人はいるものです。大げさに言えばこれらの数人の職員で施設の評価を下げているのですから、経営リスクなのです。
安全な介護では、新任職員向けの接遇研修の動画セミナーを提供していますので、抜粋版をご覧下さい。

 

 

 

安全な介護 山田滋代表

 

 

 

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