一般社団法人日本保健福祉ネイリスト協会
一般社団法人日本保健福祉ネイリスト協会(東京都渋谷区)では、高齢者施設などを訪問し高齢者に「ネイル」を施す「福祉ネイリスト」の育成・認定、福祉ネイルの研究、普及を行っている。レクリエーションの差別化や、保険外サービスの提供を目的に、介護職員など福祉関係者や元ネイリストが資格を取得している。
同協会では、認定校で実地研修を含めた通算25時間の教育修了者を、福祉ネイリストとして認定している。これまでの認定者は約1000人。
福祉ネイリストは、ネイルサロンに行くことが難しい人のもとを訪問し、ネイルや爪のケア、ハンドトリートメントを施す。施術時間は20分程度で、その間、回想法やユマニチュードを取り入れたコミュニケーションにより、精神面のケアも行う。依頼は、福祉ネイリストが直接受け、依頼者と業務委託契約を交わし、サービスを開始する。
福祉ネイルは、認知症の高齢者のQOL向上効果が期待できるという。同協会の福祉ネイリストが特養に入居している認知症の女性高齢者32名を対象に、19年1月から6月の期間で効果検証を実施した。その結果、施術したグループは施術しないグループと比較して、QOLを客観的に評価する指標であるQOL‐Dにおいて、「周囲との活き活きとした交流」などの項目に有意な差が見られた。
多くの高齢者施設を訪問してきた川越認定校の篠原恵理講師は、実際に施術を受けた高齢者の様子について「表情などから、気持ちが明るくなっていることが伺えます。ネイルの話題で高齢者同士のコミュニケーションも活気付いています」と話す。また女性だけでなく、男性でネイルを楽しむ人もいるという。「デイサービスに通う男性には、希望に応じてバラの絵を描き入れました。本人が喜ばれていただけでなく、家族との会話の話題づくりにもなったようです」

川越校 篠原恵理講師
介護職など受講レク差別化に
認定校は、沖縄県を除く各地に40ヵ所を開校。施術の経験値、面接、プレゼンテーションなどの審査に通過し、協会に登録された福祉ネイリストが教育に当たっている。
カリキュラムは、日本ネイリスト協会の教材に準拠して、爪の構造や病気、カラーリングの方法などについて学ぶもの。合わせて、日本の高齢者福祉の現状や老年学など、福祉分野についても学習。卒業時には、施設への営業から実施まで、独立して行える力を身につけることを目指す。授業料は8万円(税別)。卒業後には、協会に年会費3000円を支払うことで、福祉ネイリストとして活動が可能になる。

施術の様子
「現在、元ネイリスト、介護職、訪問美容師などが受講しています。高齢社会に対応する新たな保険外サービスや、他施設との差別化ポイントとしての期待から受講される人も多いです」(篠原氏)
新たな展開として、情報交換や、PR活動、共同で保険加入などを行う「ネイルやさん」という福祉ネイリストによる共同体が大阪で設立された。関東でも5月1日より発足する予定で、関東圏での福祉ネイル普及を推進していく。