福井市で実証実験 官民学連携で開始

 

ケア・フレンズは福井県福井市で小規模多機能型居宅介護事業所などの介護事業を展開している法人。昨年2月から、福井市、福井大学との連携で、空き家を住宅確保困難者向けのセーフティネット住宅としてサブリースし、高齢者の住まいを確保する実証実験を開始した。5年後を目途に、200軒の整備を目指す。

 

 

 

連携のスキーム(ケア・フレンズ提供資料より)

 

実証実験が実施されているのは、福井市の中心部に位置する住宅街の松本地区。福井大学の調査によると、4月現在、119軒の空き家が存在している。

 

 

一方で、「自宅で暮らし続けるのは不安だが、サービス付き高齢者向け住宅などに入居できる資金はない」など、住宅確保に課題を抱える高齢者がいる。また、市内に新たに高齢者施設を開設できる土地が少ない、という課題もあった。市ではその解消に向け、空き家を住宅の確保が難しい高齢者でも借りることができる、セーフティネット住宅に転換することを計画。実証実験が動き出した(連携スキームは図表参照)。

 

 

実証実験では、空き家のオーナーに対し市がコンタクトを取り、ケア・フレンズへとつなげる。同社は、空き家を借り、建物の点検・修繕などを実施。その後、高齢者に向け貸出を行う。

実証実験の担当者、優しいまちづくり推進事業部居住支援チームの吉村和真統括部長は空き家を使用するメリットについて、「オーナーが処分するつもりであった空き家なら、比較的安価に借りることができるため、サブリース時の家賃を低く設定できます。費用の面で困難さを抱える高齢者に入居しやすい価格で提供可能です」と語る。

 

吉村和真統括部長

 

 

 

サブリース時の家賃は2~3万円。市の生活保護受給者向けの家賃補助の範囲内の金額としている。それにより、家賃滞納のリスクを軽減できる。
高齢者が入居する際、オーナーにとって懸念事項となるのが、孤独死の問題だ。

 

 

そこで、住まいだけでなく、生活をサポートするサービスも用意し、入居者だけでなく空き家オーナーの安心にもつなげている。福祉サービスのサテライト店舗「まちもと」が、入居した元気高齢者を対象に介護保険外サービス「うちのもん」を提供する。サービス内容は定期訪問・連絡などの見守りを、IoTシステムも活用して実施するもの。料金は月額3300円で、駆け付け、通院付き添い、家事手伝いなどがオプションで利用できる。これらの見守りなどのサービスによって孤独死を防ぐ。

「今後は『まちもと』を中心に、地域住民の交流を生むことで、点から面で高齢者の生活を支えられる地域を構築したく思います」(吉村統括部長)

 

 

同法人では、5年以内を目途に200軒の空き家活用のセーフティネット住宅を整備することを目標としている。
国でも、空き家をセーフティネットとして活用する取り組みを推進したい考えだ。

 

 

国土交通省は、居住支援法人が行う業務(①登録住宅の入居者への家賃債務保証②住宅相談など賃貸住宅への円滑な入居に係る情報提供・相談③見守りなど要配慮者への生活支援④①~③に附帯する業務)に対し、1000万円を上限に補助する事業を行ってきた。21年度からは、孤立対策、空き家をサブリースする方式のセーフティネット住宅の運営を行う場合について、補助上限額を1200万円に拡充している。

 

 

 

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