さいたま市で特別養護老人ホームなどを3拠点運営する社会福祉法人五葉会では、「アクティビティケアチーム(ACT)」というレクリエーション専門チームの活動が施設のブランディングにつながっている。戸山文洋理事長に話を聞いた。

社会福祉法人五葉会 戸山文洋理事長
――「ACT(以下・アクト)」とは。
戸山 特別養護老人ホーム「緑水苑指扇」を拠点とし、法人内の施設に訪問し、レクを実施するチームです。アニマルセラピー、音楽療法、園芸療法のレクリエーション専門スタッフを各2~3名ずつ雇用しています。
――専門チーム立ち上げのきっかけは。
戸山 本部長として入職した2014年まで、アニマルセラピーについて研究していました。
また、以前スウェーデンの介護施設を視察したことがあるのですが、まるで目から鱗でした。動物と入居者が一緒に暮らし、入居者は用意されたレクを自由に選んで自由に参加する。このような環境に感銘を受け、当法人でも日常の中に色々な選択肢を用意したいと考えました。
――効果は。
戸山 入浴拒否や暴言・暴力などのBPSDが緩和されるなどの効果がみられました。レクを通じて日中の活動量を高めることで、服薬内容を見直し、減薬につながったケースもあります。
――アクトの活動を浸透できた理由は。
戸山 「身体介助をしないレク専門のスタッフ」というポジションに、最初から介護スタッフからの理解を得られたわけではありません。法人内では人件費の面で疑問視する声もありました。アクトの活動を浸透させるため、音楽療法では失語症や難聴の方でも参加できるように工夫するなど、単にレクを行うだけではなく、専門性と質を高めていきました。また、アクトのスタッフも業務の合間に身体介助に携わることで、信頼関係が築けました。
――経営面の効果は?
戸山 外部のレクボランティアを受け入れるには、そのためにスタッフの時間を割かなければなりませんが、アクトがあれば、介護スタッフのレクの関連業務が減るため、利用者とかかわる時間が取れるようになります。また、レクチームを内省化することで、コロナリスク対策にもなります。
さらにアクトを立ち上げたことで、音大卒など福祉業界外からの応募者が増えました。アクトがブランディングとなり、利用者や人材獲得に効果が出ているほか、職員の帰属意識も高まりました。アクトの活動は、人件費などコスト面からもすぐに収益に結びつくものではありませんでしたが、7年かけてようやく黒字化経営を実現しました。

専門スタッフがアニマルセラピーを実施
――今後について。
戸山 リハビリ計画にアクティビティプログラムを組み込み、PT、OTなどリハビリ専門職を配置し、加算取得を目指します。また地域の高齢者に向けた音楽会などを実施し地域に貢献したいです。