企業のリピート利用も増加
50歳以上のシニアに特化した人材紹介と派遣サービスを行うシニアジョブ(東京都新宿区)が急成長を遂げている。背景にはシニアの旺盛な就労意欲とシニア層を活用したい、もしくは活用せざるを得ない企業の事情がある。専業でマッチング機能を果たす同社の中島康恵社長に現状を聞いた。

中島康恵社長
――2016年、クラウドソフトの販売から業態転換し、シニア人材ビジネスへ。
中島 就業を希望するシニアの数に対して、採用を希望する企業の数が少なく就職難度も高いと気づき、まずは求職者を集めた。巣鴨に行って片っ端から声をかけ、集まった求職者に1人につき100社以上に電話をし、売り込みに駆け回った。
そのなかで需要の大きい職種があることに気づいた。会計、税務や施工管理、自動車整備、看護など。明確なスキルや資格が必要な職種に絞りこみ、一方でⅠTの知見を活かしてシステムを自社開発。サイトを介したマッチングの精度を高めた。
――状況は変化した。
中島 求職者は前年比200%のペースで増加し、5年前は、全く興味を示さなかった企業との取引が続々と成立するようになった。
――利用実績は。
中島 企業の登録数は延べで約4万4000社。中小規模の企業が多い。一方、求職者の登録数は、延べ約4万4800人に達した。
――ブレイクポイントはどこに。
中島 17年から18年の1年、そこで弾みがついた。この1年の間に求職者は6000人増加し、求職企業数は1万社増となった。
法改正も拡大後押し
――4月1日施行の改正高年齢者雇用安定法も追い風となる。
中島 報道が増え認知度が上がるのに連れ、50代前半の求職者の登録も増えてきた。「給与が下がってもよいから長く勤めたい」「より定年の遅い企業に勤めたい」というニーズが顕在化している。

医療事務での成約も多い
――企業のマインドは。
中島 企業サイドには、コンプライアンス的にシニアを活用せざるを得ないという事情もある。無論それだけでなく、シニアを活用することで社内を活性化しようと考える企業の増加は明らか。例えば、シニアと20代の若手がペアを組むことで、世代が近い場合よりも衝突せずに結果を生むという話も聞く。当社利用企業でも「良さ」を実感したリピーターが増えている。
――マッチングの難しさはどうクリアした。
中島 難しいからこそ、シニアに特化した。経営判断としてそこに集中する。シニア人材には現役世代以上に、即戦力であることが求められる。求職者の経験を重視し、それを十分に活かせるか否かを徹底的に精査する。そのため、マッチングには時間を要する。
――いわゆるスキル以外に重視するのは。
中島 新しいことを積極的に学ぶ好奇心や意欲があり、年下の同僚や上司ともうまくコミュニケーションがとれる謙虚な姿勢や柔軟性をもつ人。イメージ以上にそうしたシニアは多いと感じる。
――介護・医療分野の人手不足は深刻。どうみているか。
中島 当社がシニア人材向けサービスに取り組んだ初案件は、介護事業者への紹介だった。人手不足は深刻でかつ需要は旺盛と認識。現状、リソース確保が追い付かず本格化できていないが、今後対応に力を入れていく。
――事業の展望は。
中島 全職種に領域を広げていく。一方でシニア対象の他のサービス展開において他社との協業も進める。資本政策としては、4年後までの東証マザーズ上場を目指している。創業時、エンジェルを募り2000万円の出資を得た。そのときから上場は公言してきた。いまそれが夢ではなく、遠くない日の目標の1つになっている。