「欧州の家庭医を習え」と日経
コロナ禍での医療のひっ迫。病床数は世界一なのになぜか。疑問に応えたのが日本経済新聞。5月1、2日の連載企画「コロナ医療の病巣」と4、5日の社説である。医療制度の抜本的見直しを提言した。
2日の見出しはズバリ、「『患者より経営』の民間病院」。「経営の自由」を盾に、コロナ患者のために病床を割かない医療法人を糾弾する。収入の「診療報酬は国民が払った保険料と税金」。「飲食店が感染防止の最前線に立つのに、コロナとの闘いから逃げる」。おかしいではないかと主張する。もっともなことだ。
5日の社説では英国のNHSを引き合いに、日本独特のフリーアクセスを止めて家庭医(総合診療医)の増大が解決策だと謳う。医療改革の方向性をきちんと示した正論だ。
だが、本文で4月12日の日本慢性期医療協会の提言もその流れに沿うとしたのは解せない。卒後研修の中に総合診療機能を含めるよう求めたが、専門医としての総合診療医研修の廃止も主張している。これでは家庭医の増大にはつながらない。我田引水が過ぎたようだ。
大阪府門真市と神戸市の高齢者施設で合わせて38人ものコロナ死が5月8日に報じられた。有料老人ホームと介護老人保健施設だという。大手紙を見る限り施設名が分からない。何故、施設名を出さないのだろうか。住民、読者が最も知りたいこと。負の影響もあるだろうが、何よりも事実を伝えるのが使命だろう。
朝日新聞の連載コラム「それぞれの最終楽章」で4月17日から3回、旅行医を取り上げた。末期患者の旅行をかなえる内科医の話だ。個々の医師や看護師の頑張りで実現するのでなく、システム作りを目指す。もう600人近い医師が賛同。会社まで立ち上げた伊藤玲哉医師に拍手だ。
5日のこどもの日に総務省が例年通り、14歳以下の子ども数を発表した。各紙とも「40年連続減」とある中、「新型コロナウイルスによる妊娠控え」(毎日新聞、東京新聞)を強調するのは疑問だ。「2020年の出生数は過去最少」だが、妊娠期間と子ども全員を視野に入れねば。
「夫が認知症になっても後見人をつけてはいけない」と驚きのタイトルなのは5月15日号の週刊現代。家族でなく見ず知らずの司法書士が後見人になったため金銭の出入りが不自由になった事例から、銀行の代理人指名制度を推奨。王道の後見制度の足を引っ張る論調は嫌な感じだ。
浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員
1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。