4月に新卒が入社して、2ヵ月目となりました。休み明けに、五月病で退職が相次ぐという心配はないかもしれません。しかし、コロナ禍での入社となった今年は、昨年までと違って早期離職が増える可能性が高いと予測されます。これまで以上の注意が必要です。

 

 

 

●新卒があなたの施設を選ぶまで

まず、今年の新卒人材が就職活動をした、昨年の状況を振り返ってみましょう。

□求人が少なく選択肢が狭かった
□就職説明会のほとんどがオンライン化していた
□面接、内定式もオンラインで行う法人が多かった
□内定前に、就職先の先輩との接触はほとんどなかった

 

このような環境ですから、第一志望の業界を諦めて介護業界を選んだ人材も多くいます。選考過程も、非常時の対応でした。感染予防のために施設見学を中止したり、パネル越しに短時間で面接を行っていた施設もあったようです。

彼らとしては、現場の雰囲気をリアルに感じる機会に恵まれず、「この会社に決めよう」という確かな意識もないままに、不安を持ちながら就職先を選ばざるをえなかったと思います。

 

 

 

●入社後の不安

せっかく入社した法人ですから、彼らだってこの出会いを失敗に終わらせたいとは思ってはいません。しかし、入社後も離職を助長する環境が彼らを待っているのです。

□歓迎会の中止
□マスク越しでのコミュニケーション
□ソーシャルディスタンスを維持した休憩室

 

こんな環境ですから、同僚、先輩と人間関係を築くのも一苦労です。だからといって、逆境の中、相談相手も見つからず、静かに職場を去っていくなどということはあってはなりません。期待していた新人が辞めてしまうダメージは、計り知れないものがあります。
彼らにとっても皆さんにとっても、避けなければいけない事態です。

 

 

 

●早期離職の予防策

そこで皆さんに、これからやっていただきたいことは次の3つです。

①「歓迎」を伝える
彼らが朝起きたときに「今日もがんばろう」と思えるように、皆さんの新卒に対する歓迎の気持ちを伝えましょう。何も特別なことをする必要はありません。以下のようなことを徹底して〝居場所〞をつくれば良いのです。

 

□名前をつけて挨拶をする
□楽しい雰囲気をつくる
□新人に興味を持つ
□指示・命令・ホウレンソウ以外のテーマで(短時間でも)会話する

 

歓迎する気持ちを「期待感」として伝える上司もいますが、いまの人材にはそれが過剰なプレッシャーになるかもしれません。期待を込めることは大事ですが、タイミングに注意しましょう。

 

 

②家族を味方につける

最近は、新卒で就職したばかりの子どもから「つらいから辞めたい」と相談されたときに「就職先ならいくらでもあるのだから、辞めてしまいなさい」と転職を促す親が多いという記事を見たことがあります。

 

その対策としてある事業者では、5月末頃にご両親に封書を送っています。封筒には、そのスタッフが働く姿を撮影した写真と一緒に、以下のようなメッセージが書かれた手紙を同封しています。
例年6月頃になると、先輩の仕事ぶりを自分と比較して「自分も先輩のようにできるだろうか」と不安になる新人が多いようです。

 

ご両親にも「この仕事は自分に合わないのではないか」「つらい」と不安を吐露されることも増えることと思います。そのようなときはぜひ「自分を信じて頑張ってほしい」「あなたならできる」と背中を押してあげてください。
どれだけ効力があるかわかりませんが、この1通で1人でも離職をストップできるとするならば、やるべきだと思います。

 

 

③早めの成功体験

新人に課題を与え、プレゼンの機会を設けて優秀者を表彰する「新人コンテスト」などのイベントを実施している法人もあります。従来はこのように、頑張った成果を認める場をつくればよかったのですが、今年は違います。それよりもまず、日常業務の中で「介護の仕事は自分に合っている」と思えるような場面をつくることが重要です。

 

 

糠谷和弘氏 代表コンサルタント ㈱スターコンサルティンググループ
介護事業経営専門のコンサルティング会社を立ち上げ、「地域一番」の介護事業者を創り上げることを目指した活動に注力。20年間で450法人以上の介護事業者へのサポート実績を持つ。書籍に「介護施設帳&リーダーの教科書(PHP)」などがある。

 

 

 

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