宮城県では2020年3月、高齢者施設の職員を対象に、週休3日制導入のモデル事業を開始した。行政主導の下、介護現場に週休3日制を導入するこの事業は、県の介護人材不足解消に向けた施策の要として期待がかかっている。
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週休3日制導入のモデル事業に携わる宮城県長寿社会政策課介護人材確保推進班の半田藤子主幹(左)と三浦崇文主事(右)
介護職員不足25年に約4000人
東北最大の都市である仙台市を擁する宮城県。現在の人口は約228万2000人で、2004年以降微減傾向にある。高齢者は63万8000人で、高齢化率は20年3月時点で27.9%となっている。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、25年には31.2%、40年には37.9%まで上昇すると見込まれている。
課題となるのが介護の需給ギャップだ。20年に約11万8000人の要支援・要介護認定者数は、25年には約13万人になると予想されている。求められる介護職員数も増加し、25年には4万1413人が必要になる見込みだ。しかし、19年に3万2870人である介護職員数は、現状の増加ペースでは25年に3万7225人に留まり、4188人不足すると予想されている。
そこで、県では介護人材の確保・定着に向け様々な取り組みを実施してきた。
20年度は「介護人材確保対策緊急アクションプラン事業」と銘打ち、1億2000万円の予算で人材確保事業を展開。その一環で、「宮城県介護職週休3日制応援宣言!」と名付けたプロジェクトを始動。週休3日制のモデル事業を実施し、事業所への普及を推し進める方針とした。
モデル事業実施 県が施設を支援
同県で高齢者福祉にかかわる施策を担当する、長寿社会政策課介護人材確保推進班の三浦崇文主事は、「週休3日制の導入はアクションプランの中でも、看板施策として位置づけています」と語る。「特にプライベートの時間を従来よりも確保できる点から、今の若手に訴求する効果を期待しこのモデル事業が提案されました」
現在、若手の多くが就労する上でプライベートを重視する傾向にある。内閣府が17年に、全国の16歳から29歳までの男女(有効回答数1万)を対象に実施した調査では、「仕事よりも家庭・プライベート(私生活)を優先する」という回答が63.7%となった。(内閣府:平成30年版子供・若者白書)。
だが現在、介護業界で週休3日制を導入している法人は数少ない。「それはシフト管理の複雑さがあると思われます」と三浦主事は指摘する。「そこで、モデル事業所として導入に際してのサポートを県が行っていくこととなりました」
プロジェクトでは、昨年春に参加事業所を募集した。応募施設から5つを選定し、県から外部コンサルタントを派遣。施設ではコンサルタントがシフトの作成などをサポートした。
来年を目途に導入手引書作成
長寿社会政策課介護人材確保推進班の半田藤子主幹は、「施設職員から『初めて連休がとれた』『勤務時間中の人手が増えたことで、しっかり休憩を取れるようになった』といった声が届いています」と話す。期待通りの職員の負担軽減の効果があったとした。その一方で、欠員が発生した際にどの職員がカバーに入るのか、職員同士が対面で申し送りをする機会が減りコミュニケーションの問題が発生するなどの課題も見えてきたという。
新規参加、今年度も募集
施設が週休3日制のシフトで動きだしたのは今年からで、まだ日が浅い。県では、今年度もモデル事業所への支援を続け、検証を続けていく。半田主幹は、シフトが本格稼働する今年度を「重要な1年間」と位置づけた。
今年度は施設支援の継続に加え、参加事業所を新たに5 施設募る。事業の結果は来年を目途に取りまとめ、週休3日制導入のノウハウを記載したハンドブックの作成を目標とする。
3年前の段階では、県では25年時点で介護職員が4755人不足すると予想されていた。現在その数は4188人とされており、介護の需給ギャップは改善傾向にある。週休3日制を定着させることで、その動きが加速することが期待される。
宮城県介護職週休3日制応援宣言!
・社会福祉法人みずほ
「特別養護老人ホームうらやす」
・社会福祉法人ウィンズライフ
「特別養護老人ホームいろは」
・医療法人社団清山会
「介護老人保健施設いずみの杜」
・社会福祉法人青葉福祉会
「グループホームはちまんの風」
・社会福祉法人さんりん福祉会
「グループホームふかふか・はうす」