CCRCのコンサルティング事業などを手掛ける、みんなのまちづくり(東京都渋谷区)は4月、長野県佐久市に移住者向けのサービス付き高齢者向け住宅「ホシノマチ団地」を開設した。空室が目立っていた市営団地を転用。就労を支援するプログラムを開講するほか、インターネットの環境が整ったシェアオフィスを併設。入居者が働きながら暮らせる環境を目指す。

 

みんなのまちづくり 伊藤洋平社長

 

 

入居後も仕事で生涯現役目指す

 

佐久市は、年間を通じて冷涼な気候で、自然豊かな環境、都心からの良好なアクセスが特色だ。また、地域医療を推進する佐久総合病院があり、住民、医療、市の3者連携による健康づくりを推進している。

 

その地に開設されたホシノマチ団地は、鉄筋コンクリート造の4階建て、築25年の市営住宅を利用。その一部である16室をみんなのまちづくりが借りて運営している。16室の内、1・2階部分の8室をサ高住に改修。そのほかの部屋は、一般向けのセルフリノベーション可能な賃貸として運営している。

 

ホシノマチ団地は、佐久市が「農村型」のCCRCを推進するエリアと位置づけた臼田地区にある

 

 

特徴は、仕事をしたいと考える入居者を支援すること。
その1つが「ホシノマチアカデミー」の開校だ。入居者は無料で、「SNS情報発信講座」や、「介護初任者研修」など、仕事をする上で役立つスキルを身に付ける様々なプログラムを受講できる。

 

 

佐久市が移住者向けにワーキングスペース併設

 

また、同一敷地内には、「地域交流拠点shoku─ba」が設置されており、Wi─Fiやプリンター、会議室、キッチンなどを備えたシェアオフィスとなっている。入居者は無料で使用でき、WEBを活用し個人で仕事を受けることや、シェアオフィスの職員として就労することも可能だ。また、常駐職員は、SNSの使用方法や、仕事マッチングサイトへの登録サポート、地域のシルバー人材センターへの紹介なども行う。

 

伊藤洋平社長は、「クラウドソーシングなどを活用しつつ、自分のやりたい仕事で月2〜3万円ほどの収入を得ながら暮らす生活をイメージしています」と話す。

来年度中に全16室を満室にすることを目標に、SNSなどを活用して入居者を募集していく方針だ。

 

 

農村型CCRC 地域活性化を

 

ホシノマチ団地が開設された背景には、佐久市が2015年から進めてきたCCRC、「佐久市生涯活躍のまち構想」がある。佐久市の人口は2010年をピークに減少に転じたことから、新たな人の流れを生み、地域を活性化させる施策として実施された。

 

 

市はホシノマチ団地の位置する臼田地区を、「農村型」のCCRCを展開するエリアと位置づけている。そこでは、サ高住で暮らしながら、農業や地域活動など、社会参加を通じて健康的な生活を送ることを目指している。

 

 

同地域で空室が目立つ市営住宅があったことから、市はサ高住として活用する方針とした。施設の開設まで建物及び土地の使用料を無償とする、開設後の使用料を減免することなどを条件に、居室の改修、生活相談などのサービスの提供、管理運営を担う事業者を公募。みんなのまちづくりがそれに応募し、サ高住を運営することとなった。加えて、生涯活躍が実現できるよう、仕事支援の体制も整えた。

 

 

伊藤社長は「ホシノマチ団地により地域住民から、『団地に活気が戻った』という声があがります。地域を活性化させるものとして、住民からも歓迎されています」とした。
サ高住の部屋は2タイプを用意。1LDKが54平米で家賃は月6万5000円。3DKが71平米で8万円。共益費は4000円。安否確認、生活相談サービス費として、単身世帯は1万1000円、2人同居世帯は1万6500円が別途必要となる。

 

 

 

国でも既設の住宅ストックの活用を促している。サ高住整備促進のための「スマートウェルネス住宅等推進事業」において、近年は新築の場合の補助額の上限が下がっている。一方、改修の場合では上限が引き上げられている。

人口減少に合わせて、既存ストックを活用しサ高住に転換する取り組みは、今後さらに広がりそうだ。

 

 

 

 

スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう