新型コロナウイルス感染症が蔓延するようになって早1年半。高齢者を中心にしたワクチン接種が始まったとはいえ、依然コロナ禍の収束は見えてこない。そうした状況下、弊紙では「新型コロナ感染7段階モデル」を開発した国際医療福祉大学教授の高橋泰教授にインタビュー。ファクトベースのモデルにてらした新型コロナの特性、世代別リスクと社会活動抑制の弊害のバランスを考慮したコロナ対策の必要性を聞いた。

国際医療福祉大学 高橋泰教授
高橋泰(たかはし・たい)
金沢大学医学部卒、東大病院研修医、東京大学大学院医学系研究科修了(医学博士(医療情報))/米国スタンフォード大学、ハーバード大学に留学後、1997年より国際医療福祉大学教授。2018~20年同学赤坂心理・医療福祉マネジメント学部長、大学院医学研究科医療福祉管理学分野教授を兼任する。社会保障国民会議や日本創生会議などにおいて高齢者の急増、若年人口の減少に対応した医療・介護提供体制の整備の必要性を提言、地域医療構想などの先鞭をつける。2016~20年、内閣未来投資会議・構造改革徹底推進会合医療福祉部門副会長。
高齢者のリスク高く
――新型コロナウイルス感染症による死亡に関し、明らかになってきたことがあるとうかがいました。
高橋 昨年の夏頃から、寝たきりなど重度の要介護状態の高齢者、人工透析を受けている患者、重度の糖尿病患者など、新型コロナに感染すると非常に高い確率で死亡する「ハイリスク・グループ」と言える一群があることがわかってきました。
新型コロナは、ハイリスク・グループにとって非常に怖いウイルスです。ハイリスクの人たちは、いずれも免疫力が低下し、血管が傷つきやすい状態にあるという共通した弱点を抱えている。こうした人が集まるユニットや病棟に新型コロナが入り込んでしまうと、多くの利用者や患者が亡くなる可能性が極めて高いと言えます。
一方、「ローリスク・グループ」にとって新型コロナは、軽微なレベルの感染症と言ってもよいウイルスです。死亡はハイリスク・グループに集中しているため、ローリスク・グループの新型コロナによる死亡率は、一般に想像されるよりもかなり低いと言えます。昨年の状況をみると、0〜29歳までの場合、1668万人に1人が新型コロナで亡くなりました。これは、同年代の人が交通事故で亡くなる1000分の1の確率です。
30〜59歳の場合でも死亡者は35万人に1人で、同世代の交通事故死の60分の1にあたります。
60代では5.3万人に1人、70代では2万人に1人。また最もリスクが高い80歳以上でも人工透析を受けていたり重度の糖尿病を患ったりと、ハイリスクに該当する人以外では、死亡者数は2万人に1人に満たない。これは、同世代のがんによる死亡の60分の1にすぎません。
――ニュース報道などから受ける印象と異なります。
高橋 全年齢で見ると、およそ3.7万人に1人で、10万人あたり3人よりも、少ないのです。こうしたファクト(事実)をきちんと知ったうえで、ハイリスクをどう守り、ローリスクの人たちの日常をどう取り戻すのか考えなくてはなりません。
そのためには、新型コロナとは何なのか、本質から考える必要があります。
――昨年開発された「新型コロナ感染7段階モデル」が注目を集めました。
高橋 新型コロナは全国民の関心事であるのに全体像が見えてこない。そこでファクトをもとに全体像を見通せて、かつ数値化できるモデルを作ろうと思いました。それが「新型コロナ感染7段階モデル」です。新型コロナの感染ステージを、0〜6の7段階に分けてそれぞれのステージに至る確率や、それに関わる要因を見える化したものです。これを前提に考えれば、現実に起こっていることを非常にすっきりと説明できます。(以下、本紙に続く)

提供:高橋泰教授