医師業務のタスクシフトが進む

 

5月21日に医療法改正案と関係法案が参議院本会議で可決・成立した。

この改正医療法は以下の7つのポイントよりなる。

(1)医師の働き方改革

(2)医療関連職種の業務範囲の見直し

(3)医師養成課程の見直し

(4)新興感染症対策の医療計画への追加

(5)病床機能再編支援事業の地域医療介護総合確保基金への位置づけ

(6)外来機能報告と「医療資源を重点的に活用する外来」

(7)持ち分の定めのない医療法人への移行計画認定制度の延長。

 

 

これらのいくつかを見ていこう。

 

まず(1)医師の働き方改革では、法律が施行される2024年より、医師は暫定的に定めた上限年間1860時間以上を超えて労働することができなくなる。現在、この上限を超えて働いている大学病院や三次救急病院などの勤務医はおよそ2万人。

 

また35年からは、標準と定めた960時間以上の上限時間を超えて働くことができなくなる。現在、960時間以上1860時間未満で働いている勤務医は6万人いる。なんと35年までに合計8万人もの勤務医が960時間超えの労働ができなくなる。この8万人の医師の労働を一体誰が担うのだろう?

 

 

このため(2)と(3)の見直しで医師の業務を他職種にタスクシフトを行うことになる。すでに医師の医療行為のうち38行為は特定行為研修を受けた看護師が担うことになっている。今回の改正ではさらに救命救急士に病院の救急外来などでタスクシフトをできるようにする。そして(3)の見直しでは医学生が臨床実習として医業を行えるようになる。いわゆるスチューデントドクターだ。著者もニューヨークの病院に留学していたとき、救急外来ではスチューデントドクターの存在は強力な助っ人だった。

 

そしてコロナ感染拡大を受けて、(4)で24年からスタートする医療計画に、新興感染症対策が6番目の事業に組み込まれることになった。しかしコロナ第4波のなか「24年を待たずとも前倒しで導入すべし」という意見は強い。現在のコロナの病床対策は感染症法で行われている。この感染症法も2月の改正で強化されたとはいえ、病院の開設運営を定めている医療法のほうが感染症法より医療機関に対して執行力がある。

 

さらに医療計画は現在の地域医療構想や公立・公的病院の再編統合440病院リストとも関連している。このため医療法で定められた医療計画を前倒し実施することで、コロナに対する病床計画をより強力に実施できる。

 

さらに(6)も見逃せない。これはこれまでの入院における地域医療構想の外来医療版ともいうべき大きな改革だ。その先には現在のかかりつけ医や、在宅医療の再定義も視野に入ってくるからだ。

 

 

武藤正樹氏(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役

1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長、規制改革推進会議医療介護WG専門委員(内閣府)

 

 

 

スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう