<連載第41回>あすの介護に 佐和子の ハートふるヒント

 

毎週土曜日に勤務している生活維持向上倶楽部「扉」では勤務のたびに「何故だろう?」や「疑問が払拭された」等の発見が次々にある。

 

土曜日参加のメンバーさん(利用者様)は女性が2人に対して男性メンバーさんは10人もいる。そのうちのA氏とE氏は女性メンバーさんと同席している。

A氏とE氏は、食事の前には台所でお漬物や収穫した野菜を切るなど炊事洗濯はお手の物。朝の来所時のバタバタしているような時に女性メンバーさんが洗濯物を取り込んだり畳んでいると、自然にそのお手伝いをしてくれる。他にも、腰椎圧迫骨折で最近まで入院していて、痛みから車椅子で微動だにしなかった女性メンバーさんがおぼつかない足取りながらも室内を歩いていると、A氏はパートナー(スタッフ)を呼び、「歩き始めたけど大丈夫か?」と知らせてくださる。

 

 

その女性メンバーさんがおやつのお好み焼きを素手で食べ始めると、今度は隣に座っているE氏がその手をティッシュで拭いてあげていた。実はこの女性メンバーさんは意思疎通が難しく、私たちが対応するといら立つこともしばしばある。ところが抵抗することなく拭かれていた。この自然な感じはいったいなんだろう……。このような光景は私が介護の仕事をしてきた中で一度も見たことがなかった。

 

 

室内を自由に歩いている人を見つけると、あいつは変だ!素手で食べている様子を見つけると、何だかおかしな人だと遠ざかる。というのがありきたりな現象だったのに、扉では全く違う。まるで自分の家族のように接している。一般的な施設ならスタッフの仕事ととらえて、その様子を見た時点で「私たちがしますから大丈夫です」と言いかねないことだとも思う。

 

 

この一部始終をスタッフに報告すると、A氏とE氏は奥様を長年介護してきたと言う。そのことを知り、全てが理解できた。炊事洗濯も難なくこなせて、意思疎通が思うようにいかない女性メンバーさんに自分の席に座られても文句ひとつ言わず譲る。
実はこのA氏とE氏、他の男性メンバーさんとは折り合いがつかなかったりもする。アセスメントが取れていなければ思いつくことが出来ない席配置だと思う。

 

 

女優・介護士 北原佐和子氏

1964年3月19日埼玉生まれ。
1982年歌手としてデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に活動。その傍ら、介護に興味を持ち、2005年にヘルパー2級資格を取得、福祉現場を12年余り経
験。14年に介護福祉士、16年にはケアマネジャー取得。「いのちと心の朗読会」を小中学校や病院などで開催している。著書に「女優が実践した魔法の声掛け」

 

 

 

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