奄美イノベーション(鹿児島県奄美市)では、デイサービスなどの介護施設と、観光客向けの宿泊施設が併設された地域包括ケアの拠点「まーぐん広場・赤木名」を運営している。介護と観光が接近することにより、介護サービス利用者のQOL向上を始め、観光産業にも貢献する。

 

鹿児島県と沖縄県のおよそ中間に位置する奄美大島。「自然だけでなく、奄美には琉球と薩摩の両方の影響を受けて形成された多様な文化があります」と、同地出身の建築家で、九州大学の非常勤講師も務める山下保博社長は話す。

 

山下保博社長

 

 

奄美イノベーションは、これらの伝統的な文化の継承を目的とした観光事業である「伝泊」を展開する法人。空き家となった古民家を整備し、観光客向けの宿泊施設を運営している。宿泊者には「奄美八月踊り」などの体験を通して地域の文化を伝えていく。

 

伝泊、高齢者介護、保育など様々な機能を持つ

 

この観光客向けの宿泊施設に加えて18年に、宿泊施設のほか、同社が運営する介護保険サービスの施設などが集約された複合施設「まーぐん広場・赤木名」を開設した。

 

同施設は2階建てのスーパーを改装しており、広々とした空間を活かした点が特長。1階部分に、デイや住宅型有老、地域交流スペース、地元野菜などの特産物を取り扱う売店「奄美産マーケット」、レストランなどを設置。レストランでは、地元の高齢者向けのワンコインランチの提供を行っている。交流スペースは子育て支援のため学習・保育スペースとして開放している。
施設中央にはステージが設けられており、各種イベントで活用。地元住民、観光客、介護サービスの利用者など、様々な人が参加する企画が開催されている。

 

施設内観。「元スーパーであることから、広々とした空間を活かすようにしました」と山下社長は話す

 

 

 

延べ4~5万人来場

 

山下社長は、コロナ禍で現在は外部からの来場を自粛しているとしたうえで、「これまでに延べ4~5万人の人がここを訪れています」と語る。介護サービス利用者は各種のイベントなどに参加し、地元住民や観光客と交流することによって、ADLの維持・向上が期待できるという。

 

 

また、高齢者の存在が観光に好影響をもたらす。施設利用者がコンシェルジュとなり観光客と直接触れ合う。歴史や文化、生活の様子について話を聞く機会が観光客の「旅の特別な体験」となる。
まーぐん広場を開設した経緯について山下社長は、「伝泊事業で多くの住民との交流の中で、奄美の介護や医療の実情を知り、『いつも大学で教えていることを実践したい』という思いが芽生えました」と話す。

 

 

山下社長は14年に九州大学の非常勤講師に就任。高齢者を含めた街づくりをテーマにした授業を行うのと同時期に、自身の設計事務所で高齢者施設の勉強会チームを発足。全国の高齢者施設を見学、研究を行ってきた。「石川県白山市の社会福祉法人佛子園が運営する施設は特に参考になりました」。同法人の地域コミュニティ施設は様々な人を「ごちゃまぜ」にケアする場となっている。対して、奄美には様々な人を包括的にケアする取り組みを行っている法人が少ないことを実感したという。

 

 

そこで同社は15年に閉店した奄美市笠利町のスーパーマーケット「スーパーさと」を、地元金融機関の支援を受け地域包括ケアの拠点として整備することとした。スーパーさとは、地元の特産物を多く扱うほか、住民同士の交流の場となっていたこともあり、行政や住民から施設の再整備が強く求められていたという。

 

施設外観。島の玄関口である奄美空港より車で7分の立地

 

 

 

 

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