医療制度に斬りこむ日経

 

コロナ禍で日本の特異な医療体制が浮き彫りになった。掘り下げる記事が続くのは日本経済新聞。5人のインタビューを連載した「コロナ医療の病巣・打開策を問う」の5月29日に井伊雅子一橋大教授が登場。「海外では『1入院当たり』の定額制なのに、日本は『1日当たり』の出来高制。退院を促さず効率性に欠ける」「日本の保健所の役割を海外では家庭医が担う」とズバリ、改革の急所を指摘する。

 

翌30日に「病院確保 『私権制限』どう折り合い」、31日は「病院間の機能調整急務」「地域医療を立て直す」と速射砲のように繰り出す。

 

これに対し6月2日の毎日新聞社説「公立病院の再編は見直すべき」は近視眼的な発想にとどまり好対照だ。コロナ患者を公立病院が受け入れたことに拘り、多数派の民間病院が対応できない事実を置き去りにした議論だ。

 

 

深刻なのは少子化への影響。5月26日の夕刊で日経新聞と朝日新聞は「妊娠届4.8%減」と報じた。その日の厚労省発表だが他メディアは翌日に回した。日本の社会保障は次世代頼みだけに重要事。速報すべきだろう。

少子化対策が課題なのは海外も同様。6月4日の日経新聞は「育児支援 各国急ぐ」と米中仏などの支援策を報じた。視野を広げたいい記事だ。

 

 

コロナ禍が特養など介護施設の建設を遅らせている、と明らかにしたのは5月31日の読売新聞。1面で「入所枠増 未達成8割」、3面で「介護人材不足 コロナが痛手」とスクープ扱い。同紙が主要74自治体にアンケート調査した結果だ。
「3万9900人の定員増計画に対し1万400人分が未達成、その自治体は82%」と記す。事業者は「併設デイサービスの経営悪化」「住民向け説明会が開けない」などコロナの影響を答えている。独自調査ならではの分析だ。

 

 

コロナ禍での理不尽な現実を突きつけたのは朝日新聞。PCR検査陽性の死者に家族を会わせない警察や葬儀社、病院の心無い言葉を伝えたのは5月31日の社会面。翌6月1日には「訪問介護 『優先接種が必要』」とワクチン接種で、在宅系介護者が施設系と差別されていると報じた。

 

 

コロナ禍とは直接関係はないが、介護業界の大きな動きを「『介護もうかる』群がるファンド」「M&Aで規模拡大」と5月25日に報じたのも朝日新聞。ツクイ、ソラスト、ニチイ学館への外資系ファンドの一連の買収劇を効率性の観点から冷静に記す。事業規模と報酬の関係を考えさせるいい記事だ。

 

 

浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

 

 

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