施設内感染発生時の対策を聞く

ピースウィンズ・ジャパン 稲葉基高 医師インタビュー

 

ピースウィンズ・ジャパン 稲葉基高医師

 

 

特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン(広島県神石高原町)など3団体が運営する災害緊急支援プロジェクト「空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”」は昨年末より、新型コロナウイルスのクラスターが発生した高齢者施設11施設へ支援を行ってきた。チームメンバーの稲葉基高医師に、高齢者施設におけるクラスター発生時の対策を聞いた。

 

 

――高齢者施設への支援の経緯は。

稲葉 私が所属するピースウィンズ・ジャパンは、国内外での自然災害や紛争や貧困など人為的な要因による人道危機や生活の危機にさらされた人々を支援しています。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、20年4月にはクラスターが発生したクルーズ船や一般病院、精神科病院へ支援を開始しました。医療機関を支援するなか、高齢者施設から搬送される患者が多く、高齢者施設への支援も開始しました。

 

 

――支援内容は。

稲葉 これまでグループホームやサ高住など入居系施設を支援してきました。空飛ぶ捜索医療団の医療チームには医師3名、看護師約80名、調整員約10名がいます。高齢者施設からの直接依頼や行政からの依頼で、医師・看護師・調整員1~2名のチームで2、3日から2週間ほど施設支援に入り、正しい感染症対策の指導や、法人内外との連絡・人員調整、物資支援などを行います。

高齢者施設は、利用者の「生活の場」であり、特にサ高住では居室移動が難しく、ウイルスが高い確率で存在するレッドゾーンが点在し、ゾーニングが非常に困難です。また、高齢者施設では職員が防護服の着脱方法の指導を受ける機会が少ないため、その指導も実施しています。

 

 

第三者の介入で人員確保調整

 

――人員調整について。

稲葉 感染発生時は、濃厚接触者となった職員は稼働できないため、シフト組みが難しくなります。マニュアル通りの業務では負担が重くなりがちなため、優先度や必要度により業務を再編します。
例えば車椅子の場合全体ではなく手がよく触れる部分のみ消毒したり、床の全面消毒や空間消毒も一時的に行わなかったりします。

また、クラスターが発生しているにもかかわらず、経営本部に伝わっていないケースがありました。慢性的な人材不足という法人の課題に気を遣い、クラスターが発生しても職員は経営本部に援助を求めにくいという気持ちがあるようです。
このケースでは、第三者の介入が有効です。当チームの医師や調整員が第三者の立場で経営本部に状況説明をして、他拠点や外部から人員確保するなどの調整をしました。

 

 

「情報共有」がパニックを防ぐ

 

――高齢者施設での対策方法は。

稲葉 支援先の共通点は、自然災害時のように、パニック状態に陥ってしまうことです。そうならないためにも、事前に組織図、連絡体制、指示系統を決め、クラスターが発生した場合は毎日必ず情報共有する場を設ける必要があります。

人との接触を絶たない限り、感染リスクをゼロにするのは不可能です。コロナ禍が長期化し現場の疲弊が目立っている現状も踏まえ、可能な範囲で対策を行うことです。
また、感染発生時に備え、”受援力”=助けを求める力を高めておくことが重要です。保健所だけでなく行政、社協、NPOなど外部支援も選択肢に入れ、どの業務を誰に頼めるかを仕分けておくと良いでしょう。

 

当法人では、感染症対策の疑問点などについて問い合わせられるチャットボットサービスがあります。また毎週5施設に、無料の個別相談会を実施しています。介護度や間取りに合わせたゾーニングなどの感染対策や食事・入浴介助方法、外部との連絡方法などについてお答えしていますので、活用していただきたいです。

 

ゾーニングの作業を行う

 

 

 

 

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