8月 三重県にオープン
自立支援特化型デイサービスを全国で展開するポラリス(兵庫県宝塚市)は、宗教法人塔世山四天王寺(津市)と6月1日業務提携契約を締結した。8月上旬には四天王寺所有地内にデイを開設し、これまでの同社のメソッドに加え、寺院ならではの様々なツールを活用して高齢者のADL改善などに注力していく。提携に至った経緯や、今後の展開について森剛士社長に話を聞いた。

森 剛士社長
元幼稚園だった建物賃貸し開設
ーー今回、四天王寺との提携に至った経緯を教えて下さい。
森 国では地域包括ケア体制の構築を進めていますが、私は10年以上前から、その役割を果たすのは寺院であると考えてきました。寺院はどんな町や村にもあり、かつては住民の集会所であり、学校であり、医療機関であり、よろず相談所であるなど、地域コミュニティの中心でした。寺院が社会福祉法人を設立して介護事業を手がけるケースは多いですが、もっと直接的に介護に関与することが地域社会のためになるだろうと考えていたところ、一般社団法人全国介護事業者連盟の斉藤正行理事長より四天王寺を紹介されました。
ーー四天王寺について教えて下さい。
森 大阪市にある四天王寺と同じく、聖徳太子の建立と伝えられています。元々介護事業に興味があり、敷地内にある四天王会館を解体し、介護事業所を建てる計画でいました。しかし、それが早くても3年先になることから、少しでも早く始めたいと考え、幼稚園として運営していた建物を当社が賃借し、デイを開設・運営することになりました。

四天王寺の本堂
寺院ならではの様々な取り組み
ーー開設するデイはどのようなものでしょうか。
森 当社の直営ですが、当社名は全面に出さず「通所介護四天王庵」という名称にしました。1回18人の1日2回転制で、ほかのデイと同様に、歩行能力の回復など利用者の自立支援に特化した介護サービスを提供します。今月22日に内覧会を行います。ちなみに今年は聖徳太子没後1400年の節目の年であり、22日は太子の月命日です。
寺は地域社会の中心 瞑想・写経など導入
ーー寺院との連携したデイならでは、という特徴はありますか。
森 例えば四天王寺の倉島隆行住職が考案した「禅脳」という瞑想の一種を取り入れ、運動の前に心身を落ち着かせます。また精進料理を取り入れた食生活支援を行ったり、僧侶がデイを訪れ利用者の様々な相談にのったりもします。さらに、利用者は写経をしたり、境内清掃などのボランティア活動をしたりと、これまでにない形で運動・機能訓練を行います。
短期滞在型のサ高住を新設
ーー今後、ほかの寺院と同様のスキームを組む考えはありますか。
森 初めに申し上げたように寺院は地域社会の核となる存在です。今後、全国の寺院と提携し、この取り組みを広めていきます。倉島住職も、今回の提携の成果を宗派・宗教の枠を超えて伝えていくと意気込みを語っています。また、今回のデイは宗教色を強く出していませんが、「祈る」「信仰を持つ」ことが、高齢者の自立支援においてプラスに作用する部分が大きいのではないかと考えています。今後運営を続けながら、この点に関するエビデンスを得られればと思います。
ーー今後の取り組みとして、どのようなことを考えていますか
森 四天王会館解体後の介護事業も当社で請け負うことを視野に入れています。
実は、今年9月、大津市で当社初のサービス付き高齢者向け住宅を開設します。一般的なサ高住のように長期居住が目的ではなく、3~6ヵ月程度の期間住みながら併設されている当社のデイを利用するという短期滞在型です。このタイプのサ高住を四天王寺でも開設できればと考えています。