定期面談で退職リスクに備えよ
ある職員から「辞めたい」と吐露されたら、あなたならどうしますか?
ボーナスをもらって転職活動をする人も多い時期。予測していなかったときのショックは大きいですよね。なんとか引き止めたいところです。

他の業界であれば、退職意志が出てきた段階で、すでに転職先が決まっていて引き止めるのが難しいケースが多いと思います。しかし介護業界の場合には、まだ退職の覚悟ができていない段階で言い出す方も少なくありません。対応の仕方によっては、引き止められるかもしれません。

 

 

■引き止めるべきか
あなたが最初にすべきは、退職を思い留まらせるか、そのまま送り出すかの判断です。もう気持ちが次の仕事に移ってしまっていたり、やる気がなさそうにしたりしているのであれば、引き止めはかえって他の職員に悪影響かもしれません。また、退職することをあなたに話す前に、他の職員に伝えてしまっているのであれば、もう引き下がることができないかもしれません。引き止めるメリットがあるかどうかを見極めてから、次のステップに進みましょう。

 

 

【退職引き止め3ステップ】
①本音を聞き出す
上司であるあなたに対して〝本当の理由〞を言っていないかもしれません。それを聞き出さなければ、原因の解決はできません。まずは個別面談の機会をつくって、理由を傾聴しましょう。あなた以上に本音を聞き出すのに適任がいたら、その役目をお願いしてもよいかもしれません。

 

面談の際「そんなことを言っても仕方がないだろう」とか「大したことないじゃないか」と、その職員の言い分を否定することは絶対にしてはいけません。また「辞めたら給料が減るんじゃないか」「他の会社に行っても同じだぞ」と、転職のデメリットを伝えるのも逆効果です。
話す内容をそのまま受け止めて、その職員の立場に立って理解するように努めましょう。話にしっかりと耳を傾けることで〝ガス抜き〞になる場合もあります。

 

 

②解決策を提案する
原因がわかったら、あなたができる解決策を提示しましょう。例えば「人間関係」が理由であれば、部署異動などを提案します。業務負担が原因であれば、負担を減らす策を講じます。
その際、あまりに特別な(特殊な)対応をしようとすると、かえって居づらくなりますから、注意してください。ポイントは、他の職員に理由を説明したときに、納得してもらえるような解決策(こじつけでも)を検討することと、すぐに動き出して、その進捗状況を密に伝えることです。
「私のために動いてくれている」という気持ちが高まり、退職を思い留まらせることができるかもしれません。

 

 

③退職リスクに備える
ここまでしても、辞めてしまうことはあると思います。施設長であるなたは、人員が不足する(現場業務に穴があく)リスクに備えて裏で動いておく必要があります。

 

例えば、以下のような対策が必要です。
□求人準備(採用広告がすぐに出せるように準備する)
□業務の振り分け(退職後に運営が滞らないように、少しずつ振り分けを始める)
□標準化(その職員にしかできない業務があれば、その方法を標準化して、他の職員にもできるようにしておく)
こうした動きをその職員に悟られると、退職を促進することにもなりかねないので、注意して行いましょう。

 

 

■退職を予防する
そもそも退職希望があったときに、バタバタと混乱しない体制を築く必要があります。ある特養を中心とした施設では、急な退職に備えて以下の2つを行っています。

①ショート(5分間)面談(月1回)
②働き方意向調査(年1回)

面談は、普段から不安や悩みをキャッチして、相談してもらいやすいように行っています。また意向調査は近い将来の「昇進」「年収」「異動」などの希望をきいて、キャリアアップに役立てるのと同時に「近いうちに退職の意向がありますか?」とダイレクトに確認して、退職リスクに備えています。「退職意向」については、意外にも率直に答えてもらうことができているため、離職の課題を発見したり、余裕を持った採用活動ができているそうです。

 

糠谷和弘氏 代表コンサルタント ㈱スターコンサルティンググループ
介護事業経営専門のコンサルティング会社を立ち上げ、「地域一番」の介護事業者を創り上げることを目指した活動に注力。20年間で450法人以上の介護事業者へのサポート実績を持つ。書籍に「介護施設帳&リーダーの教科書(PHP)」などがある。

 

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