検証 ホーム内の女性スタッフ暴行【前編】

 

同性介助の原則から男性も必要
大阪市内の高齢者住宅で、夜勤中に女性スタッフに睡眠薬を混入させた飲食物を摂取させ、抵抗できない状態にした上でわいせつ行為をはたらいていた容疑で、元スタッフの男性が逮捕されるという事件が発生した。24時間体制の介護事業所では男女が一緒に夜勤をすることが珍しくなく、こうした事件が起こる可能性はどこでもあり得る。スタッフが夜勤中に性被害にあう可能性に対する認識や、対応策について関西地域の介護事業者に話を聞いた。

 

 

性的トラブルの相手社内の人間は想定外
「勤務中のスタッフ間の性的暴行、というのは正直全く想定していませんでした」と大阪府中部で複数の高齢者住宅を運営する介護事業者は、今回の事件の意外性について語る。

 

関西地域の介護事業者を対象に行ったアンケート調査でも、今回のような事態を全く想定していなかったのは10社中3社。可能性は想定しつつも何の対策もしていなかったところも3社あり、ほとんどの事業者は全くの「無防備」体制といえる(下の表参照)。

 

今回の事態「全く想定しておらず」3割
 今回の事件を受け、関西の高齢者住宅運営事業に対し、以下の質問を書面で行った。回答は上の表の通り。
質問1 これまで「夜勤中の暴行(を含む職員の性的トラブル)」の発生は、どの程度想定していたか。
1.全く想定していなかった
2.発生する可能性は想定していたが、特に対策などは講じていなかった
3.発生する可能性は想定しており、何らかの対策を講じていた
4.過去に発生したことがある
質問2 現在男女一緒の夜勤は行っているか。
1.男性のみ、女性のみと日によって完全に分離している
2.完全分離が好ましいと考えているが、男女が一緒になっていることもある
3.特に意識していないが、結果的に男性のみ、女性のみの勤務の日がある
4.常に男性・女性が一緒に勤務している。
質問3 質問2で3,4と回答した人に。男女一緒であることの理由は何か。(複数回答)
1.完全男女別にするとシフト作成に支障が出る
2.採用時の見極め、入社後研修を行っており、性的トラブルは起こらないと考えている
3.男性がいることで施設の防犯面などで役に立つ
4.入居者の性別にあわせて同性介助を行う必要があるため
5.LGBTへの理解やジェンダーフリーの観点から、男女を外見や戸籍上だけで一律的に区別することは好ましくない
質問4 夜勤時の女性職員の安全確保のため、「現在取り組んでいること」「今後取り組みたいこと」は。(複数回答)
1.男女で同じ日に夜勤に入らない
2.男女職員の待機場所を分離し、女性の待機場所は個室化・内側からの施錠可などにし、許可なく男性職員が入れないようにする
3.夜勤中に男性職員と女性職員が1対1になることを禁止する(女性はペアで行動など)
4.女性に防犯ブザーなど周囲に助けを呼べるものを携帯させる
5.薬物の混入などを防ぐため、夜勤中の飲食物は、自身で購入・持参したものに限定する。
6.女性に対し、護身術等の研修の実施
7.採用時の人間性の見極めや過去の問題行動のチェックなどを強化
8.採用後の教育研修
9.建物内の防犯カメラ・監視カメラの設置(すでに設置済みの場合は増設)

 

 

それは無理もない話で、女性スタッフが何らかの性的トラブルに遭遇する場合、事業者側が想定していた相手は、一般的には外部からの侵入者による暴行や、利用者などからのセクハラであり、勤務中に同じ職場の人間が暴行を加えるというのは、介護に限らず他の業界でもまず考えられないことだ。

 

 

女性の泊まり勤務実施しない業界も
もっとも他の業界では、「女性に(泊りを含む)深夜勤務はさせない」という業種・職種も多く、物理的に従業員間での性的暴行が起こる余地は少ない。介護事業所でもそれができれば問題は根本的に解決するが、現状では2つの面で障壁がある。

 

まずは、介護スタッフとして働いているのは圧倒的に女性が多く「男性のみ」「女性のみ」という夜勤シフトを組むのが難しい点がある。今回話を聞いた介護事業者の中には「ホームの規模が小さく、夜勤は1人で行える」との理由から、男女一緒の夜勤を行っていないところがあったが、それ以外の事業者の大多数が男女別夜勤を実施していない(できていない)。その理由として、スタッフの男女比率格差をあげている。

 

第2の理由は、「同性介助が望ましい」というもの。入居者の多くが女性であるため、男性スタッフだけでシフトを組むと、トイレ介助やオムツ交換などの際に女性入居者に恥ずかしい思いをさせることになる(もちろん、その逆もあり得る)。「入居者とスタッフの男女比が同程度」というのが望ましく、一定数の男性スタッフが必要になる。

 

このように、現状では「男性のみ」「女性のみ」で夜勤シフトを組むことは難しい。そうである以上、男女スタッフが同じ建物の中で、上司などの目の届かない状況で一緒に夜勤をしつつ、今回のような事件が起こらない対策を、ハード・ソフト両面から考えていく必要がある。
では、具体的にどのような対策が考えられるだろうか。それについては次号(7月21日号)で検証してみよう。

 

 

スタッフのストレスが一因

アンケート調査では、今回の事件に関する意見・感想を自由に述べてもらった。その一部を紹介する。

 

〇業界のコンプライアンスに関する意識の低さと、スタッフの日頃のストレスが主な原因と考えられる。事件が起きた施設だけでなく、業界全体の問題として考えなくてはならない。

 

〇今まで考えたこともなかった事件で驚いている。社としてできる対策を考え、しっかりと取り組んでいきたい。
〇スタッフを信用するという時代は過ぎた。いかにリスクを察知し、早期に手を打ち、事件が起きないようにするかが求められているように感じる。
〇特にコロナ禍になり、利用者も職員も高ストレス状態が続いている。さらに暴行事件や虐待事件が発生しないよう気をつけていきたい。
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