周囲の大人、早期発見を

 

「ヤングケアラー」とは、家族などをケアする18歳以下の子どもを指す。ケアの負担が高まると、学習などの時間が減り、将来のキャリア形成に影響が及ぶ。彼らを取り巻く現状や、今後、介護・医療に期待されることについて、一般社団法人日本ケアラー連盟(東京都新宿区)の田中悠美子理事に話を聞いた。

一般社団法人日本ケアラー連盟 田中悠美子理事

 

 

──近年、ヤングケアラー支援の動きが活発化しています。

田中 国で、今年3月「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム(以下・PT)」を発足しました。また、周知活動や実態調査、相談窓口の設置などの支援が、全国で始まっています。
この数年で急激に動きが加速しました。支援は、今後も全国に広がっていくと思われます。

 

背景には、メディアによる報道の増加、世論の高まり、議員の働きかけがあります。
国は今年、PTを立ち上げ、支援の方針を打ち出しました。それ以前は直接的な支援策が議論されたことはありませんでした。政策課題として認識されていなかったのです。
例えば、子どもの不登校に対しての議論ならこれまでもありました。しかし、その原因が家族をケアしていること、という部分までは踏み込めていませんでした。

 

連盟としては、2013年にヤングケアラーをテーマにしたシンポジウムの開催して以来、その実情や支援の必要性を訴えてきました。また、新潟県南魚沼市や神奈川県藤沢市で実施された実態調査への協力なども行っています。現在の状況は、連盟の活動が実を結んだ部分もあると感じています。

 

 

 

──PTの会議では実態調査の結果が公表されました。中学生の5.7%、高校生の4.1%が「ケアをしている」という結果をどのように受け止めますか。

田中 実態調査は、先の自治体や埼玉県でも実施されました。今回は全国規模で、かつ中学生・高校生に直接アンケートを行った点で、大きな意義があるものだと言えます。
推察ですが、実際にケアをしている数は、数値よりも多いと考えられます。家族のケアをする状況が当たり前になっていること、ほかの家庭と比較する機会がないといった理由から、ケアをしている自覚がないヤングケアラーもいるためです。

 

詳しく見ると、「ケアをしている」という回答が、埼玉県の調査よりも多いことが分かります。これは、ケアの中に「幼い兄弟の世話」が含まれているためです。支援施策を考えるうえで、「きょうだいが幼いから」という理由だけでケアする子どもをヤングケアラーに含めるか、については意見が分かれる部分です。幼いきょうだいの世話については、子育て支援の施策が必要であり、ヤングケアラー支援策と分けて考える必要があるという声もあります。

 

 

自覚なく重い責任負う子ども 

「1日4時間」負担感の目安

 

──「ケアをしているためにできないこと」については、「自分の時間が取れない」「宿題や勉強をする時間が取れない」という回答が多くあります。その一方で、「特にない」という回答が約5割になっています。

田中 「特にない」というのは、ケア以外のことをしてこなかったため、「やりたいことがわからない」状態に陥っていることも考えられます。ですが、ケアに費やす時間の影響が大きいでしょう。成蹊大学の澁谷智子教授は、ケアの時間と負担感についての関係を調査しています。そこでは、1日4時間以上ケアをする場合、負担感が大きくなることが示されています。

 

今回の調査では、ケアに費やす時間は3時間未満が多い。自分のことと家族のケアが両立できている状態にあるため、「特にない」という回答も多くなったと思われます。
そこから、実際にどの程度支援を必要とする状況にあるのかを判断する際には、「4時間以上のケア」というのが1つの基準になると考えられるでしょう。

 

 

ヤングケアラーは無自覚のまま、重い負担を抱え込んでしまっている現状がある。具体的にどのような支援が必要になるのか。

 

 

早期発見に向け学校と情報共有 

「責任感の強さ」から孤立に

 

――長時間のケアで疲弊する前に、周囲の人を頼ることはできないのでしょうか。

 

田中 1人で抱え込んでしまう人は、強い責任感や「家族を支えたい」という思いを強く
持っています。
例えば、80代祖母の骨折をきっかけに介護をしていたケース。高校に上がってからは介護中心の学生生活を送っていました。両親は幼児期に離婚、同居する父や年上のきょうだいは仕事が忙しく、本人が介護するしかない状況でした。
それに加えて、母親代わりになってくれた祖母を「今度は自分が支えたい」という気持ちが大きかったことも、介護中心の生活を送るになった理由に挙げられます。

 

 

 

――周囲の大人が支援をするうえで、注意すべきことはありますか。

田中 ケアしている家族を否定しないことです。例えば「あなたは大変な状況にあるのに、ご両親は何をしているの」といった言葉。
本人は家族を守るためにケアをしています。その家族を否定することは本人の行為の否定、つまり本人を否定することになります。
そのような相手と信頼関係を築くのは困難です。「相談したい」と思われなくなります。

 

 

 

――田中理事は、支援施策の柱として4点を挙げています(下図表参照)。どのような施策が必要ですか。

田中 まずは理念・方向性からお話します。
ヤングケアラーには、人間としての基礎的な力を養う時期に、ケアの重責が課されます。そして、教育や自分の力を伸ばす機会を失ってしまいます。ほかの子どもと同じように、潜在能力を発揮できるような支援が求められます。
そのうえで、まずは学校などで大人が変化に気づき、早期発見をし、支援につなげる(表中①)。

 

そして、ヤングケアラー担当教員を配置する、同じ境遇の子ども達が話し合える時間をつくるなど、学校内部の支援体制を整えいくことが必要となるでしょう(表中②)。

 

支援施策の柱

①認定・アセスメントを行い支援する
・学校、医療、保健、福祉、地域などで発見を促進する。自治体は発見されたヤングケアラーについて通告する窓口を設ける。自治体はヤングケアラーに対応できる部署人材を確保し、本人とその家族へ相談
・アセスメントを実施。支援計画を策定し、支援する。

②学びの機会とその結果を改善する
・学校で、支援の中心となるヤングケアラー担当教員を配置。児童・生徒が安心して話せる環境づくり、カウンセリングを行う。ケアをしていることに配慮し学びのサポートをする。学校で安心して過ごせるようにする。
・学校と、家庭、保健、福祉、医療との連携。

③支援ニーズに対応するサービス開発とそれへのアクセスを保障する
・各都道府県に相談窓口(SNS・電話など)を設置。個別相談などを受けるヤングケアラーコーディネーターを配置する。
・ホームヘルプサービスで子どもの生活支援も可能にする、利用限度額の緩和などによるケア負担の軽減。
・ピアサポートグループの立ち上げや、子ども食堂などの取り組みの支援。

④自立して社会生活を送れるように支援する
・「子供・若者育成支援推進大綱」にヤングケアラーと若者ケアラーを位置づける。

 

――介護・医療事業者はどのように関わって来るのでしょうか。

田中 表中の①と③の部分で、重要な役目があります。
①では、特に居宅訪問するケアマネジャーや訪問介護、看護の専門職が早期発見の鍵となります。ヤングケアラーが家族の中でどのような役割を果たしているのか、どのくらいの負担を負っているかを認識し、学校などと情報共有することで、早期・適切な支援につなげられます。その際、情報共有ツールとしてICTが効果を発揮すると思われます。
③は行政の協力も不可欠ですが、ホームヘルプサービスで、利用者と一緒に子どもの生活支援も可能とするような、メニューの開発といったことが考えられます。

 

最近開始された混合介護(介護保険とそれ以外のサービスを同時一体的に提供すること)の活用も、子どもの負担軽減につながるでしょう。

 

 

地域ぐるみで支援 多職種連携が必要
思いを共有する交流の場設置を

 

 

――支援を必要としていても打ち明けられないことも考えられます。

田中 子どもに寄り添い、子どもの意見を代弁する大人がいれば、状況を変えることができます。その役目はスクールソーシャルワーカーや、行政が担うことになると思います。
また、地域で同じ境遇の人などが集まれるグループを設立し、思いを打ち明けることができ、仲間や支援につながる場を作ることも必要でしょう。特に、学校を卒業し、様々な人とつながりにくくなった「元」ヤングケアラーにとっては、意味のあるものです。

 

 

――今後の連盟の動きはいかがでしょうか。

田中 連盟では、「ヤングケアラープロジェクト」として、当事者グループ紹介や、調査・研究も行います。
今、ヤングケアラー支援が盛り上がりを見せています。それをきっかけとして、全ての「ケアする人」を支える動きが高まるように、活動していきたいと思います。

 

 

 

 

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