本コラムはアカリエヘルスケアカンパニー(横浜市)の髙橋健一社長による「ICT× 医療× 介護」をテーマとした特別対談コーナーとなる。第9回目は、介護、医療の現場で生じるトラブルの解決代行に特化した法律事務所「おかげさま」の代表弁護士、外岡潤氏との対談。介護業界に興味を持ったきっかけなどについて語ってもらった。

外岡潤代表弁護士
現場レベルアップ 情報発信サイト活用で
■漫画で介護に興味
髙橋 法律事務所「おかげさま」の公式サイトを見ましたが、介護現場のトラブル解決にかなり力を入れているように感じました。介護に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか。
外岡 介護を題材にした漫画「ヘルプマン」です。2009年に弁護士業を始め、1年ほど経って実家に帰った時に偶然手に取って読み、業界の実態について知りました。
髙橋 弁護士が介護業界に興味を持つこと自体が珍しいかと思いますが、実際に業界のことを知っていかがでしたか。
外岡 どんな仕事になるのか想像もついてなく、思いだけで飛び込みました。現場を知っていくと、起こること1つをとっても転倒事故、ハラスメントなど、多くの問題が見受けられました。ヘルパーの資格も取り、業務のことを知っていく中で解決すべき問題がまだ多数あると感じ、介護現場でのトラブル解決などに注力するようになりました。
■介護業界の訴訟問題
髙橋 介護ではサービス周辺の関係者も多く、訴訟にならなくても様々な関係者間における問題が起こると感じています。労働者側と企業側、どちらの立場で弁護されることが多いですか。
外岡 企業側から要請されることも多いですし、利用者家族からの相談もあります。
髙橋 どういった事例が多いのでしょうか。
外岡 内容としては様々ですが、共通の原因としては「感情のこじれ」から発展しているように感じます。
信頼関係があれば、訴訟には発展しなかったと思われるケースも多いです。事業者側として、事故が起きたらそのことに対して謝罪し、説明するという姿勢があれば大きな訴訟には発展しない場合が多いのではないでしょうか。
髙橋 私もかつて介護事業の経営企画職を担当したことがありましたが、様々なトラブルがありました。
外岡 事故を起こしたこと自体に責任があるかないかというより、事業者側の謝罪がないことが原因のこともありますので、よく聞き取りしたうえで、できるかぎり争わない、揉めずに済むような形にしたいといつも考えています。双方合意にたどり着ける糸口を探しています。
■YouTubeの活用
髙橋 YouTubeで動画配信をしているのですね。
外岡 動画編集やアップロードまで行うのが大変でまだまだ注力できていませんが、活動は続けています。
髙橋 始めたきっかけは何でしたか。
外岡 コロナ禍で、日本中の介護事業所が日々の対応や業務で苦しい思いをしているため、少しでも伝えられることがあればと思い始めました。
髙橋 どのような情報を発信していますか。
外岡 政府は当初、新型コロナに感染しないように「予防」を中心に伝えていましたが、「もしも自分の事業所でコロナが発生したらどう対応するのか」という視点からの発信が少なかったように感じました。起きた後のことを想定する、仮に施設内でクラスターが発生してしまったら、1人ひとりのエッセンシャルワーカーはどのように行動したらよいのか、現場とのコミュニケーションを取りながら発信しました。
髙橋 オンラインでの発信を通して伝えたいことはありますか。
外岡 現場のレベルアップにつなげられたらと思っています。介護の質向上という部分ではスタッフの教育も継続していくことは、コロナ禍であろうと重要です。オンラインだからこそ物理的な場所や時間に制約がなく理解度テストを行い、その後のフォロー、フィードバックも十分可能です。
<後編に続く>