社会福祉法人若竹大寿会
社会福祉法人若竹大寿会(横浜市)では、トヨタ生産方式をベースに業務改善を行っている。「標準化・簡素化・平準化」をキーワードに、ビデオ撮影による分析などを通じ業務の見直しを実施。職員の負担を軽減し、生じた時間でケアの質向上を目指す。

ビデオ撮影によって問題点を洗い出した

 

同法人は横浜市を中心に特養5施設、老健、認知症対応型グループホームなどを運営している。
トヨタ生産方式を現場に取り入れ、業務削減を目指すプロジェクトは、2016年から始まった。トヨタ生産方式はジャストインタイム(必要なものを必要な分だけ生産する)を念頭に、無駄・余剰を削減し生産を最適化させるもの。

代表的な取り組み内容として、

▽カイゼン

▽見える化

▽なぜを5回繰り返す

▽無駄取り

――などが挙げられる。

 

法人本部の山岡悦子副本部長は「介護業界の人材不足は、過剰な業務負担にあると考え、法人で業務改善の手法を構築し、発信することにより、その解決を目指しました」と、取り組みを始めた理由について語る。

 

まず16年、特養「わかたけ富岡」をモデル施設として取り組みを開始。外部コンサルタントの協力を得て、手法を学んだ。
具体的にはまず、現状の業務を分析。食事、入浴介助などの「直接業務」、直接業務にかかわる準備や片付けといった「間接業務」、必要な物を探す・取りに行くといった「無駄」に切り分けた。その内、間接業務と無駄に的を絞り、「標準化・簡素化・平準化」をキーワードに、業務改善に取り掛かった。

 

「標準化・簡素化・平準化」
「毎日、全員が行うという点で特に効果が高いと思われる、食事と入浴介助から見直しを進めました」と山岡副本部長は語る。
食事介助の例では、職員が準備する様子を動画で撮影し、どのような動作を行い、どのような問題(無駄)があるかを洗い出した。その結果、準備に要する時間が、新人が62分であったのに対し、中堅では78分、ベテランでは67分と、最大で20%、時間にばらつきが生じていることが分かった。その原因を深堀し、「効率的な手順を共有する仕組みがない」と結論。効率の良い動きを示した手順書を作成し、「標準化」した。職員の作業時間は、新人64分、中堅58分、ベテラン61分となり、全員の時間を短縮、ばらつきも少なくなった。

 

「効果が目に見えると、職員のモチベーションも高まり、『もっとこういう道具を使ったら良くなる』といった意見が積極的に出てくるようになりました。それらを採用してさらに業務を効率化しました」(山岡副本部長)。

 

具体的には入浴介助について、

▽泡タイプのボディソープの導入

▽ドライヤー手袋の使用

――といった意見が採用され、業務が「簡素化」された。

 

そして、ケア計画表の見直しによる「平準化」を実施した。まず利用者1人当たりに要するケアの時間を算出。それをもとに、職員1人当たりどのくらいケアに時間がかかるのかを、時間帯別に計算し見える化した。ケアに要する時間が60分を超える時間帯があれば、その時間の間接業務をほかの時間帯に振り分けた(図表参照)。

 

 

 

最後にオペレーションを見直すことで、職員の配置数を減らすことができた。現在、ユニット型では2・5:1、従来型では2・8:1と、限りなく3:1に近い配置になっており、手厚いケアを維持しつつも職員の配置数を減らすことができた。わかたけ富岡で実施した手法は法人内で水平展開されている。「昨年特養を新規開設する際は、法人内からの移動によって職員をスムーズに集めることができ、すぐに全てのベッドが使える状態になりました」(山岡副本部長)

 

 

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