この1カ月はオリンピック一色に染め上がったため、介護関係の報道が少なかった。なかで介護保険の手直しが8月から始まった。特養などで一部利用者の食費、部屋代の負担が増えたことだ。

 

毎日新聞が1日と5日に「特養食費引き上げ」「施設利用 負担厳しく」という見出しで取り上げた。1日の朝日新聞デジタルでは「介護家族に衝撃 8月から負担急増」と激しいタイトル。本文では、「月2万2千円近い値上げは大きい」と憤る金沢市の特養に母親が入居中の男性の声を取り上げた。

 

7月28日の読売新聞はこれらの負担回避策として「世帯分離で軽減」と提案する。問題が多い世帯分離だが、「玄関や台所が別々の2世帯住宅」なら大丈夫と、なかなか親切な解説も付く。
コロナ禍の病院や施設での面会制限に焦点を当てたのは読売新聞。長期企画の「医療ルネサンス」で7月30日から6回連載した。入院入所した高齢者に会えなくなったため、「失うものが大き過ぎる」「胸中を聞けないことが切なく、つらい」と家族の思いを伝える。

 

あまりにも一律な面会禁止の措置。「禁止が唯一の解なのか」と問いかける。タイムリーな連載である。連載5回目にただ一例、「自宅で最期 感謝し逝く」と退院事例をあげた。こうした前向きな事例がもっと伝われば、面会制限への「対抗姿勢」が広がりそうだ。

 

コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、7月28日の朝日新聞は「認知症の人 接種の同意どう確認」「専門家学会が手引作成」と報じた。日本臨床倫理学会が6月26日に作成した手引書だ。
「接種機会が妨げられないように」と手引書は強調。手引書の中で「成年後見人は代理判断者になれる」とある点に触れて欲しかった。

 

7月30日の日本経済新聞が「成年後見、住民参加促す」「厚労省が普及策 養成事業を推進」と、成年後見制度の改変策を報じた。当日開かれる厚労省の「第9回成年後見制度利用促進専門家会議」の検討内容を伝えたものだ。

 

近隣住民が名乗れる市民後見人を増やすため、養成事業の推進を自治体に求めるもの。弁護士や司法書士など専門職後見人に比べ、「市民後見人は1%にとどまっている」と記す。認知症ケアの一環として成年後見制度は重要だが、利用率は低迷状態。新施策はもっと大きく報道されてもいいはずだ。

 

コロナ対策では日経新聞が7月31日に「空き30万床 転用進まず」と医療界の「怠慢」を指摘。転換ベッド問題の追及は日経の独壇場だ。

 

 

浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

 

 

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