<連載第120回 診療情報の共有と個人情報保護>

 

 かかりつけの診療所の先生から紹介状を出してもらい大型の総合病院に移って診断を受けてもらうようなご経験はおありでしょうか。このような複数の医療機関をまたいで円滑に医療サービスを受けることを可能にしているのが、各自治体主導で導入されている医療情報連携ネットワークです。

 

この医療情報連携ネットワークとは、患者の同意のもと、医療機関等の間で、診療上必要な医療情報(患者の基本情報、処方データ、検査データ、画像データ等)を電子的に共有・閲覧することを可能とする仕組みをいいます。

 

 

受診する患者としても、最初の医療機関で診断された内容を次の医療機関に正確に伝えることは非常に難しいです。そのような意味でも、医療情報連携ネットワークは、医療機関、患者双方のメリットのある仕組みであるといえます。

 

もっとも、患者の医療情報は、多くの個人情報によって構成されており、個人情報の取扱いについて規律する個人情報保護法をはじめとする関係法令を遵守しなければなりません。
そこで、厚生労働省は、全国の都道府県、保険設置市及び特別区に向けて通達を出しています(令和2年3月31日事務連絡『地域医療情報連携ネットワークにおける同意取得方法の例について』)。

 

 

これによれば、提供元の医療機関が患者から明示的な同意を得ていることを共通のルールと定めています。文書ではなく口頭で同意を得た場合もあり得ますが、この場合はカルテなどに同意を得た旨を記録すべきとされています。その他、提供元の医療機関としては、あらかじめ院内掲示などで診療情報の利用目的を明示し、かつ、患者から留保の意思表示がないことも要件とされています。

 

他方、提供先の医療機関に関しては、患者の受診時に医療情報連携ネットワークにより他の医療機関から診療情報を取得することについて明示的な同意を得ることを要件としております。

このように提供元と提供先を含めた医療機関全体での統一的なルールが設けられていることにより、患者本人の意向に反した診療情報の拡散を防止しています。なお、法は個人情報が提供されている流れを後からでも追跡できるよう、提供元には記録の作成を、提供先には提供元への事実確認をそれぞれ義務付けています。

 

弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士

家永 勲氏

【プロフィール】
不動産、企業法務関連の法律業務、財産管理、相続をはじめとする介護事業、高齢者関連法務が得意分野。
介護業界、不動産業界でのトラブル対応とその予防策についてセミナーや執筆も多数。

 

 

スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう