≪連載第142回 課題解決!介護事業相談室≫

 

 WITHコロナがまだまだ継続していくことが予測されるなか、今回は「安全配慮義務」のご相談にお答え致します。

 

 

「働きやすさ」と「仕事のやりがい」の両立を

 

Q.福祉施設で陽性者が出ています。職員の家族も陽性者が出ており、人が限られる中、コロナ禍での雇用責任者としての留意点を教えて下さい。

A.介護事業者においては、『介護労働者の労働条件の確保・改善』が求められていますが、行政の集団指導時においても「介護労働者の数が大きく増加する中、依然として、労働時間、割増賃金、就業規則等に係る法違反が多く認められるため、介護労働者の労働条件の確保・改善に努めること」と指導されます。

 

具体的には、

▼労働契約締結時の労働条件の書面交付による明示

▼全労働者に適用される就業規則の作成・届出

▼労働時間の適正な取扱い

▼休憩時間・法定休日の確保等

があります。

 

コロナ禍においては、「コロナワクチンを接種したから大丈夫!」と油断し、接種後に感染されたご報告も受けています。ワクチン接種は、新型コロナウイルス感染症の発症を予防することができますが、ワクチンを接種した方から他人への感染をどの程度予防できるのかは未だわかっていません。そのためワクチン接種後も、手洗いの実施やマスクの着用、大人数での会食を控えるなどの基本的な感染対策の継続の声がけが必要になります。

 

私たち介護現場も交代で夏休みを取得し、人材が更に限られる中での運営は事故や苦情が起きやすくなります。そのような中でも経営者、管理職は、「安全配慮義務」=従業員が安全で健康に働けるように配慮を行わなければなりません。

 

働きがいのある職場には、「働きやすさ」と「仕事のやりがい」の両方が備わっています。安全配慮義務は、この「働きやすさ」を実現するための最低限の配慮といえます。安全配慮義務に関する内容は、労働契約法の第5条に定められています。
使用者が安全配慮義務を怠ったことで労働者に損害が生じてしまった場合、安全配慮義務違反となります。過去には安全配慮義務違反によって、損害賠償が発生している判例もあります。安全配慮義務違反となる視点は、以下の2点です。

 

・危険な事態や被害の可能性を事前に予見できたかどうか(予見可能性)
・予見できた損害を回避できたかどうか(結果回避性)

 

また、「生命、身体等の安全を確保しつつ労働すること」(労働契約法第5条)というと、工場や建設・工事現場などの危険作業や有害物質に対するものをイメージするかもしれません。しかし実際は、危険作業や有害物質のことだけではありません。厚生労働省の条文の文言にある「生命、身体等の安全」には、心(メンタル)の安全や健康も含まれると通達しています。

 

安全配慮義務違反には罰則が存在しません。ただし、安全配慮義務違反の結果として労働者が負傷したり、病気になったりした場合には、民法上の規定により損害賠償請求が発生する場合があります。
労働安全衛生関係法令では、使用者が安全配慮義務を果たすためにとるべき措置が規定されています。施策例は次の内容です。

 

 

【安全衛生管理体制を整える】

事業所の規模に合わせて、安全衛生管理体制を整える必要があります。職場で労働者の健康に悪影響が出ないよう、環境管理を行う衛生管理者や安全衛生推進者の設置は有効な対策です。
現場での適切な業務管理を行う管理者、業務責任者も必要です。健康管理を行う産業医、産業保健指導担当者などの配置の有効性も高まっています。

 

 

【安全衛生教育を実施する】

新たに採用した職員や配置換えをした職員には、速やかに安全衛生に関する教育を行わなければなりません。職員が従事する仕事に関する取り扱い事項を十分に伝達します。実務の手順だけでなく、危険防止策や万が一事故が発生した際の対処法の教育も必要です。
次回も安全配慮義務について詳しく解説します。

 

 

伊藤亜記氏
㈱ねこの手 代表

介護コンサルタント。短大卒業後、出版会社へ入社。祖父母の介護と看取りの経験を機に98年、介護福祉士を取得。以後、老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行、大手介護関連会社の支店長を経て、「ねこの手」を設立。

 

 

 

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