特別養護老人ホーム
令和3年度介護報酬改定における主要サービスの改定動向について、今回は【特別養護老人ホーム(特養)】をテーマとします。特養は、全サービスの中で最多となる29項目もの見直しとなり、改定ポイントの全てが集約されたと言っても過言ではありません。
基本報酬単位は、要介護度・施設タイプごとに異なりますが、1・8〜2・5%のプラス改定率となり、全体平均0・7%を大きく上回りました。続いて、見直し29項目の中で、特に注目すべき項目の解説を致します。
まず、『看取りへの対応の充実』の観点からは、本人の意思を尊重し「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の内容に沿った取り組みが求められるとともに、「看取り介護加算」では、亡くなられた45日前から加算算定が可能となりました。
続いて、『自立支援・重度化防止』の観点からは、まず、「自立支援促進加算」の新設です。医師が介入し、リハビリテーション、機能訓練等に取り組み、自立支援・重度化防止を推進することで月30単位が算定可能となりました。また、「LIFE」に関連した「科学的介護推進体制加算」ともに、複数の加算に上位区分の加算が新設されました。
そして、最も影響の大きい見直しは、「口腔衛生管理体制加算」「栄養マネジメント加算」「低栄養リスク改善加算」の廃止です。「栄養マネジメント加算」については廃止のみならず、栄養ケアマネジメント未実施の場合には逆に減算となります。
他方で、「栄養マネジメント強化加算」が新設されることとなり、口腔機能向上や栄養管理は、特養での基本対応であると位置づけられ、体制加算ではなく、個別対応を適切に行うことによってのみ、さらなる評価がされる方針が強く示されたと言えます。また、ついに特養にも『アウトカム評価』が求められることとなりました。従来は通所介護のみに設けられていた「ADL維持等加算」の算定が可能となり、「褥瘡マネジメント加算」「排せつ支援加算」では、褥瘡の防止とオムツを外すこと等の結果に基づき算定可能な上位区分の加算が新設されました。
最後に、『生産性向上』の観点からは、個室型ユニット特養におけるユニット定員を「おおむね10人以下」から「原則としておおむね10人以下、15人を超えないもの」とする要件緩和が行われ、さらに従来型特養では、見守り機器やICT機器の活用によって、夜間の人員配置基準の緩和、「夜勤職員配置加算」においても人員配置要件の緩和などが行われました。
特養における改定内容をしっかりと理解すれば次期改定の姿が見えてきます。
斉藤正行氏 プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。