口腔状態 セルフチェックを
独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)の自立促進と精神保健研究チームは今春、「通いの場」に参加する高齢者が自らの栄養・口腔機能の状態を把握し、低栄養などへの対策を知るためのパンフレットをリリースした。発行に先立って行った調査や制作の工夫点などについて、本川佳子研究員に聞いた。

自立促進と精神保健研究チーム 本川佳子研究員
同センター研究所の自立促進と精神保健研究チームがまとめたパンフレット「おいしく食べて低栄養予防」は、「通いの場」に参加する高齢者が、自らの栄養、口腔機能などの状態を把握し、低栄養などの対策へ理解を深められるというもの。低栄養の影響や原因、自身が低栄養状態なのか、あるいはそのリスクがある状態なのかを探れる。栄養・口腔状態から探るチェック表と結果に応じた対策、自分の食事の栄養バランスを確認する10食品群チェック、口腔機能の低下の有無などを探るチェック表から構成される。
パンフレットは、同センターが2019年度、20年度に行った厚労省の老人保健健康等事業における通いの場と参加者を対象とした全国調査を踏まえて作成した。

バランスのよい食事かを確認する食品群チェックも掲載
会食を主とした通いの場では専門職が関わる割合が約2分の1。そのうち管理栄養士が関わる場合、より会食の回数が多く、栄養に配慮した食事が提供される傾向が見られた。また、咀嚼機能に関する調査項目などにおいては、高齢者の自己評価と歯科医、歯科衛生士ら専門職による評価結果には、乖離が見られた。これを受け、「低栄養そのものやそれによって生じる問題を知り、自分の状態はどうなのかについて関心を持っていただき、低栄養を自分のこととして考えていただけるようになれば、と考え、制作しました」と、管理栄養士の本川佳子研究員は話す。
編集にあたり、工夫した点は次の2つ。まず、低栄養のスクリーニング項目に、栄養関連以外に固い物の食べやすさ、むせなどの口腔関連の項目も加えたこと。「調査の中で、チェック表に設定した栄養・口腔の各2項目と低栄養との関連性を検討。どれか1つが該当するとMNA‐SFの低栄養、もしくはその恐れがある状態が高感度でスクリーニングされました。このチェック表を通じて口腔機能も低栄養に関連することが伝えられます」(本川研究員)。
2つ目は、そのチェック表の口腔機能の項目に該当した場合、口の渇きや歯磨きの回数などから口腔機能低下の危険性をさらに詳しく確認できるチェック表を盛り込んだこと。これについては、東京大学高齢社会総合研究機構の田中友規氏などによるオーラルフレイルをチェックするための表を使用した。
「歯科職種以外でも確認できることがポイント。低栄養状態やオーラルフレイルなどの恐れがあるとわかった場合、必要な対策も同時に知ることができます」。パンフレットの申し込みは同研究所まで。サイトからダウンロードも可能。