<連載第121回 空き家問題と高齢化社会>
将来を見据えた対策 急務
「空き家問題」を聞いたことがありますか。「空き家」と聞くと、どこか過疎化が進んだ地方特有の問題に感じられる人も多いかもしれません。しかし、空き家問題は、東京や大阪といった都心においても発生しており、都市部の住民においても他人事ではなくなりつつあります。
人口減少が始まった地域においては、過疎化や世帯数の減少により「空き家」が増えています。人がメンテナンスをしなくなった「空き家」は、劣化が始まり、倒壊のリスクが高まるだけでなく、不良のたまり場になることによる治安の悪化、地域景観への悪影響など、様々な問題を社会にもたらします。
「空き家」がもたらすこれらの問題を受けて、2015年5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。
この法律では、放置により、
(1)倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態
(2)著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(3)著しく景観が損なわれる状態
(4)周辺の生活環境の保全を図るうえで不適切な状態
のいずれかにあたる空き家を、「特定空家等」として法定する制度ができました。
特定空家等に認定された場合、住宅用地に対する特例措置が受けられないことにより、固定資産税や都市計画税が高くなる可能性があります。また、「特定空家等」の所有者に対しては、「特定空家等」の状態改善につき自治体から勧告がなされることになりますが、正当な理由なく勧告に応じず、かつその後発せられる命令にも応じない場合には、所有者に対して50万円以下の過料が科せられることになります。
世界屈指の高齢化率を誇る日本においては、「空き家問題」は高齢者個人の問題だけでなく、子や孫にも負担を押し付けることにもなる社会全体の問題となります。
子供が都心部に住んでおり、将来高齢者の家が「特定空家等」に認定されるかもしれない場合には、万が一に備えて、地方自治体等が運営する「空き家バンク」への登録も検討してもらう必要がありそうです。
長年住み慣れた家を空き家バンクに登録することにより、自分の生まれ育った家を別の形で残すことができ、同時に、空き家からもたらされる負担を回避することもできるため、一石二鳥ではないでしょうか。
弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士
家永 勲氏
【プロフィール】
不動産、企業法務関連の法律業務、財産管理、相続をはじめとする介護事業、高齢者関連法務が得意分野。
介護業界、不動産業界でのトラブル対応とその予防策についてセミナーや執筆も多数。