経済団体、新事業
公益社団法人関西経済連合会(大阪市)とアジア各国の経済団体が協力し、ビジネス創出、経済活性化を目指す「アジア・ビジネス創出プラットフォーム(ABCプラットフォーム)」。そのテーマ別部会でありSOMPOホールディングス、ジェイ・エス・ビーなど10社で構成する医療・介護部会は8月より、介護事業者における外国人技能実習生の受け入れを支援する「外国人材受入プラン」を開始した。年間で約200事業者、1000人の実習生の受け入れ支援を目指す。

ABCプラットフォーム概要
関西経済連合会は、関西圏で事業を展開する法人などから構成される経済団体で、会員数は企業・団体・学校法人など合わせて1300以上。
監理団体と連携
同連合会は2019年に、アジア7ヵ国の経済団体とABCプラットフォームを設立した。企業・団体間の人材、技術、サービスの連携を促進し、新たなビジネスの創出を目指す。具体的な取り組みは、テーマ別に設置された7つの部会が推進していく。医療・介護部会は、高度な医療技術の紹介、医療ツーリズムの推進、介護分野での持続可能性、事業モデルの構築などの実現に向けて活動。SOMPOホールディングス、ジェイ・エス・ビー、京進などが加盟している。
8月にスタートした「外国人材受入プラン」は、介護分野の技能実習生を受け入れる介護事業者に対し、主に①実績ある監理団体の紹介、②わかりやすい受け入れプランの提示、③実習生が居住可能な住居の紹介――を行うもの。
部会は、ウェルグループ、のぞみグループ、京進グループ、エス・イー・エーの監理団体と連携。それぞれが提供する実習生の受け入れプランについて、初期コスト、ランニングコストなどを比較検討できるよう、事業者に情報をわかりやすく提供する。実習生の住居確保は、留学生向けの賃貸住宅の運営を手掛けるジェイ・エス・ビーが中心となり、大阪府などの自治体と連携。空き家などの有休不動産の活用も視野に入れながら、実習生の受け入れが可能な住まいを紹介する。
この事業を開始した背景には、介護人材不足により外国人介護士の活躍が期待される一方で、受け入れを躊躇している事業者が多い実情がある。特にネックとなるのが監理団体選びだ。外国人技能実習機構のデータによれば、一般監理事業の許可を取得した介護分野の監理団体は1700以上存在している。どの団体に依頼すべきかわからない、という事業者も多い。外国人材受け入れプランにより、それらの課題を解消し受け入れを促進する。
安心の労働環境 人材確保の要に
日本の技能実習制度については、米国国務省が8月1日に公開した世界の人身売買に関する報告書で、労働搾取対策の甘さが指摘されている。また、厚労省の20年10月の発表によると、技能実習生の実習実施者に対する2019年の監督指導、送検の状況では、監督指導を行った実習実施者9455事業場のうち6796事業場に労働基準関係法令の違反が認められた。実習生の労働環境の整備が課題となっている。
ジェイ・エス・ビーの山本貴紀取締役企画開発本部長は当事業において、「信頼・実績のある監理団体を紹介し、安心して暮らせる住まいも提供する。それが労働搾取を防止し、実習生がしっかりと生活できる環境を整えることにつながる」とした。良い印象が日本国内の実習生から現地の後輩に伝わることにより、後輩の実習生を呼び込むことができる。他国でも外国人介護人材を求める動きが加速する中、日本の受け入れ体制を万全にすることが重要であると指摘した。
将来的には、実習生の受け入れ促進により、「日本式介護」を輸出する際の中核を担う人材の育成を目指す。