規制改革推進会議 2年間の記録
2019年10月から本年7月まで、著者は内閣府の規制改革推進会議の医療介護ワーキンググループ(座長:大石佳能子メディヴァ社長)の専門委員を務めた。新型コロナ感染拡大の波の中、20年から会議はオンラインに置き換わったが、月2回ペースで行われた医療介護ワーキングには河野太郎規制改革担当大臣も出席してその内容は熱かった。毎回、医療介護の制度改革の最前線といった趣だ。議論は関連の業界団体からの要望と、それに応える担当省庁の回答に対して委員が質疑応答を繰り返す。そして課題解決へ向けて具体的な方向性やその実施期限を決めて、課題の進捗フォローアップも行うという形式で進む。
規制改革会議の源流は1983年の中曽根内閣時代の臨時行政改革推進審議会(会長:土光敏夫経団連名誉会長)の下に設置された規制緩和分科会に始まる。あのメザシの土光さんからスタートしたのだ。この会議の背景には、「小さな政府」や「民営化」を目指し、大幅な規制緩和、市場原理主義を掲げる「新自由主義」の経済思想が流れている。
こうして発足した規制改革会議は80年代には「経済的規制」を中心に議論がなされていた。しかし90年代からは「社会的規制」も扱うようになった。その中で官製市場の典型である医療分野については2001年の総合規制改革会議の第1次答申が1つのエポックとなった。
その第1次答申の成果を振り返ると、レセプト電子化とオンライン請求などの医療のIT化に大きく貢献したもの、混合診療のように既存の枠組みからは脱せなかったが、改善が図られたもの、株式会社立病院のように全く実現をみなかったもの、一般用医薬品のコンビニエンスストアでの販売にみられるように医薬品の定義を大きく変えたものなど様々である。成果は様々だが、規制改革会議なしでこれらの改革が各省庁の中だけで単独で成しえたかと言えば、それは疑問だ。
今年8月に発刊した本書では、こうした規制改革40年の歴史の流れを踏まえながら、規制改革推進会議の医療介護ワーキンググループの2年間の足跡を追っている。その舞台裏を覗いてほしい。
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武藤正樹著、篠原出版新社、1980円(税込)
武藤正樹氏(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役
1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長、規制改革推進会議医療介護WG専門委員(内閣府)