新型コロナウイルス感染症の拡大で、人と人との接触を避けることが求められるようになって久しい。こうした中で、自治体の介護保険事業所への実地指導件数が減少していると言われている。2021年度後半も同様の状況が続くのだろうか。実地指導対策コンサルティングを手がけるヘルプズ・アンド・カンパニー(大阪市)の西村栄一社長に見解を聞いた。

ヘルプズ・アンド・カンパニー 西村栄一社長
緊急性高い場合以外は立入せず
――コロナ禍で、実地指導の件数は減っているのでしょうか。
西村 全国の細かい数値は把握していませんが、私の肌感覚では自治体職員が立ち入っての実地指導は明らかに減っています。特に今年の5月以降は虐待の通報があったなどの緊急性がある場合を除いて、行われているケースは極端に減ったと実感しています。その分、書類を提出させたり、YouTubeなどを使ったオンライン指導を行ったりするケースが増えました。例えば、兵庫県では今年に入り、かなり細かい内容まで踏み込んだチェックリストを作成し、介護事業所に記入・提出することを求めています。
――そうした流れは今後も続きそうですか。
西村 ここにきて、私のコンサルティング先から「同じ市内の事業所に実地指導が入った」といった話があちこちで聞かれるようになりました。コロナ感染拡大後1年以上、どこの自治体もしっかりした実地指導を行えなかったのですから、介護事業所の中には、油断・気の緩みも出てきています。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出ていない地域については、今年度後半は、コロナ前のような実地指導が行われる可能性が高いとみています。
文書調査での「齟齬」追求も 算定ミスなどのチェックが重要
――どのような事業所が指導の対象になるでしょうか。
西村 例えば、コロナ感染拡大後に自治体が行っていた文書での調査の回答内容に疑わしい点があったり、提出期限を守らなかったりした事業所は「目を付けられている」可能性があります。例えば、今年の春に記入・提出した書類と、夏に記入・提出した書類との間に齟齬があったりした場合は「どちらかの内容が虚偽だ」と判断されかねません。
――事業所が取り得る対策は。
西村 故意でないにせよ、過去にやってしまった不正の事実は消しようがありません。しかし、この先の不正を防ぐことはできます。特に今年は介護報酬改定の内容をしっかり理解していなかったために、本来ならば算定できない加算を算定してしまっていた、などのミスを犯している可能性もあります。現時点で一度しっかりチェックをしておきましょう。
仮に来月からそうしたミスを無くすことができれば、年度末に実地指導が入ったとしても、直近の半年間は全く問題がない運営を行っていた、という事実を示すことができます。この事実があるかどうかで、仮に過去に問題があった場合でも、それに対する結果は大きく変わる可能性があります。