医療法人地塩会(高知県南国市)が運営する南国中央病院(同)では、患者の自立支援に力を注ぐ。地域ケア会議の推進や、介護予防教室の開催などにより、地域住民が主体的に自立に向けた取り組みを行えるように支援している。

 

 

南国中央病院は、急性期から回復期の患者を受け入れている。ベッド数は99床で、急性期26床、地域包括19床、回復期病棟54床となっている。建物内に、通所・訪問リハビリテーション、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所を設置。医療から介護へスムーズに情報共有・連携できることが強みだ。

 

法人では介護予防教室なども実施し、住民主体の自立支援となるように取り組んできた

 

 

法人の山本浩志理事長は介護保険が開始された当初、県内の介護保険認定制度の整備に携わっていた。その経験から、介護保険給付費の増加が将来の課題となると考え、自立支援に取り組む方針を決めたという。

 

森田恵子渉外統括兼リハビリ顧問は、自立支援にはケアプランの質が重要であると話す。

「地域ケア会議を通じ様々な専門職が過度なサービスとなっていないかなどを議論し、より本人の自立につながるプランになるよう見直しを行っています」

 

森田恵子渉外統括兼リハビリ顧問

 

 

地域ケア会議は2週間に1回開催。ケアマネジャーをはじめ、PT、OT、薬剤師、歯科衛生士などが参加する。1回当たり6事例を取り上げ、地域資源の活用も視野に入れながら、様々な面からケアプランの内容を検討している。

 

山間部に住む要介護1の男性のケースでは、ケアプランの見直しによって介護度が要支援1に改善した。男性の住む地域にデイサービスなどはなく、市街地のデイに通うのも困難であった。そこで、地元にあるたけのこ加工場で手伝いをしてもらうことを通じ、自立支援につなげていくことが提案されたという。

 

森田顧問は、「南国市の北部は山間地域です。生活するには不便ですが、逆にその不便さが『自立して生活しよう』という意欲を高めている面もあると思います」と話し、そのような意欲を尊重することが重要であるとした。

 

また、現在は関連法人に引き継いでいるが、2004年より地域住民を対象に介護予防を目的にした教育事業を実施。オリジナルの体操動画を作成し、住民に配布した。参加した人がそれぞれのコミュニティ内で講師となり住民主体で体操を行うことで、多くの住民の介護予防につなげることが目的であったという。

 

「コロナ禍においても、心身の状態が一気に低下したという例は耳にしていません。この教育事業により、運動が習慣化されていたことがその理由にあると思います」(森田顧問)。

 

 

一方、病院内では自立支援に向け月1回リハビリ会議を実施し、患者が自宅で生活するにはどのようなリハビリが必要か課題を設定。PDCAサイクルを回して自立に向けた過程をマネジメントしている。

長田陽介リハビリ課長兼事務部長心得は「治療を終えた入院患者を介護保険のサービスにつなぐ時、必要な情報を医療側が介護側に提供します。その際、建物内に介護サービスがあるためスムーズにリハビリを開始できます」と話す。退院直後から、しっかりと介護保険サービスを利用することにより、長期で見れば介護給付費の削減にもつながるという。

長田陽介リハビリ課長兼事務部長心得

 

厚生労働省の「介護保険事業状況報告(年報)」によると、南国市の介護保険給付費は県内・全国を下回っている(図表参照)。森田顧問は「取り組みの成果が現れている結果だと思います」と話す。今後は、LIFEによって得られたフィードバックを活用し、より、自立支援を推進していく方針だ。

 

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