感染症や災害への対応力強化

令和3年度介護報酬改定の解説について、本稿からは5つの分野横断テーマを論考していきたいと思います。見直しポイントが過去最大規模となった今改定の検証を行うことで、大改革となることが予測されている令和6年度診療報酬・介護報酬・障害福祉等サービス報酬の同時改定を読み解くことへと繋がりますので、注目すべきです。

 

5つの分野横断テーマは、
①感染症や災害への対応力強化
②地域包括ケアシステムの推進
③自立支援・重度化防止の取組の推進
④介護人材の確保・介護現場の革新
⑤制度の安定性・持続可能性の確保
となります。

 

本稿では、まず『感染症や災害への対応力強化』について解説致します。このテーマは言わずもがな「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大を受けて盛り込まれた項目であり、同時に、近年被害が増大している自然災害への対応策も合わせてテーマに加えられました。

 

4つの見直し項目が示されており、

1つ目は、「感染症対策の強化」です。3年間の猶予期間の中で、対策に向けた委員会設置・指針の整備・研修や訓練の実施が義務付けられました。

 

2つ目は、「業務継続に向けた取組の強化」です。感染症や災害が発生した場合にも介護サービスが継続的に提供できる仕組みの構築が必要であり、3年間の猶予期間の中で『業務継続計画(BCP)』の策定・研修や訓練の実施が義務付けられました。

 

3つ目は、「災害への地域と連携した対応の強化」です。非常災害対策が求められる介護サービス事業者を対象に、避難訓練等の実施に際して、地域住民の参加が得られるように連携することが努力義務として課されました。

 

4つ目は、「通所介護等の事業所規模別の報酬等に関する対応」です。

新型コロナウイルス感染症による高齢者の利用控えから経営的影響の大きかった通所介護等への支援策として定められていた2区分上のサービス時間の算定が可能(利用者の同意が前提)な特例措置の代替案として、大規模型ⅠとⅡの規模区分の変更を月単位で柔軟に対応できるルールへの見直しと、その他規模区分については、前年度の延べ利用者数から5%以上利用者数が減少している場合に3ヵ月間基本報酬の3%加算を行うルールが新設されました。

 

いまだコロナ禍の収束が見通せない状況を踏まえると、ウィズコロナの対応が長期化していくことを想定しなければなりません。災害時の対応力の強化とともに、コロナ禍を起点として、新しい生活様式に基づく、新しい介護事業運営への転換が、これからの制度改定に位置付けられていくことを認識する必要があります。

 

 

斉藤正行氏 プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。

 

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