目に見える成果を出してこそ“福祉職”

 本コラムはアカリエ(横浜市)の髙𣘺健一社長による「ICT×医療×介護」をテーマとした特別対談コーナー。第11回は全国各地の福祉団体のファンドレイジング・アドバイザーを行う日本地域福祉ファンドレイジングネットワークCOMMNET理事長の久津摩和弘氏との対談。ファンドレイジングの大切さなどについて語ってもらった。

 

津摩和弘 理事

 

 

■現在の仕事に至るまで

 

――髙𣘺 これまでの経験などを聞かせてください。

久津摩 大学卒業後、県の社会福祉協議会に就職しました。担当事業ではニーズが増えても、行政の財政状況が厳しく、予算不足で十分に対応できないことが少なくありませんでした。一方、海外に目を向けると、福祉団体は非営利組織の資金調達のノウハウであるファンドレイジングを学び、資金調達担当者である「ファンドレイザー」を当たり前に設置し、行政や個人、企業、財団などからの支援を集めて事業を行なっていることを知りました。

 

 

――髙橋 日本は主に公的資金で事業展開していますよね。

久津摩 その通りです。欧米では多くのソーシャルワーカーがファンドレイジングを勉強します。世界の当たり前を日本の常識にするため、15年前に啓蒙活動を始め、活動を加速させるため5年前に県社協を退職し、COMMNETを創設しました。

 

 

――髙𣘺 今の主な仕事は何になりますでしょうか。

久津摩 日本の福祉団体がファンドレイジングを行う環境の整備です。福祉団体のアドバイザーとして関わって先進事例を作ったり、大学教育への導入支援をしたり、省庁による仕組みづくりのサポートもしています。

 

 

――髙𣘺 どのような立場として認識されていますか。

久津摩 外から見える姿は社協や社会福祉法人、福祉系NPOへのファンドレイジング・アドバイザーや講師としての姿が最も多いかと思います。高齢者に関わるような福祉団体にも多く関わっています。

 

 

■ファンドレイジングの啓蒙活動

 

――髙𣘺 啓蒙活動の事業進捗はいかがですか。

久津摩 叶った目標は、社会福祉士養成カリキュラムへの導入、授業に組み込む大学の増加、専任担当を設置する福祉団体の増加などです。

 

 

――髙𣘺 大学では何を学んでいたのでしょうか。

久津摩 ファンドレイジングを学んでいたわけではなく、社会福祉学科でした。医療関係にも興味はありましたが、ドクターよりも身近に関われる部分も多いと感じ選びました。

 

 

■日本の福祉を変える意義

 

――髙𣘺 現在の福祉のシステムには限界があるのですね。

久津摩 福祉職の仕事は、サービスの提供自体ではなく、社会問題や生活課題を解決することです。そのためには、制度の狭間や個人的なニーズ( 食糧支援など)や即応が必要なニーズなど、公的財源ではその性質上、対応が困難またはしづらいニーズがあります。
それらを補えるのが、民間財源になります。だからこそ、欧米の福祉団体は公的財源に加え、民間財源も活用し、「解決」を目指した柔軟な活動ができるのです。

 

 

――髙𣘺 福祉業界で新たな概念を普及するのは大変でしたか。

久津摩 日本の福祉職の多くは、大学などでも制度や公的財源による活動を学び、福祉団体に就職した後も行政からの財源を主体とした経営が行われるのをずっと経験してきていることもあって、「福祉のお金は行政が出すべき」「民間財源でできるはずがない」などと、批判されることは少なくありませんでした。

 

――髙𣘺 なぜ、そこまで変えようと思ったのでしょうか。

久津摩 「この制度(サービス)ではここまでの支援しかできない」と、もう一歩先に「解決」があるのに手を差し伸べられない矛盾を感じてきた福祉職は多いです。ファンドレイジングは、その「もう一歩」となるサービスを実現させます。それができるなら、面白いですよね。

 

アカリエヘルスケアカンパニー 髙槗健一社長

 

 

 

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