介護による社会課題を解決する

求められる、より高度で専門的なアセスメント

 

地域ケアの進化を目指し、訪問看護などの実践とともに、AIやロボット開発などを行ってきた岡本茂雄氏。現在も、研究開発としての産総研や東京大学IOG、実践支援の場としてのノバケア(東京都港区)で介護そのものを進化させることを目指し活動している。介護分野のAIでは第一人者の岡本氏に話を伺った。

 

国立研究開発法人産業技術総合研究所 招聘研究員 /ノバケア 岡本茂雄社長

【主な経歴】シーディーアイ社長(2017)、セントケア・ホールティング医療企画本部長(2013)、明治安田生命保険(1997)、三菱総合研究所(1990)、クラレ(1983)。東京大学医学部保健学科卒業(1983)

 

 

 

――研究者の立場から科学的介護について伺いたい。

岡本 科学的介護に取り組むことと、それを評価するという動きは、意義のあることだと思います。ただ、そのベースとなるLIFEが機能するための課題は、少なくないと考えています。重ねて、100点満点でない段階でスタートしたことは、日本の介護の未来を考えるとき、画期的な挑戦と評価できます。一方、これを進化させる挑戦は、官民問わず取り組むべきです。

 

課題は大別すると3つ。1つは高齢者の容態像の把握、2つ目は、介入内容と量の把握、3つ目が価値観やゴールの多様性です。

1つ目の容態像の把握においては現状、職種ごとに異なる評価手法がとられています。ケアマネジャーはMDSやICF、看護師はNANDAやNIC、介護福祉士は包括的自立支援プログラムや日本介護福祉士会方式、リハビリテーション技師はFIMやBIなど、多岐に渡り、データベースとしての共有は困難な状況にあります。

2つ目の介入内容や量の把握においても、現場ごと、それぞれが異なる業務分類、把握単位を有し、共通の用語がない。業務分類などに明確な定義がなく、例えば「排泄介助」といったとき示す内容はさまざまで、業務プランや業務記録の共有ができにくい。結果、AIやロボット導入による改善や業務開発、全体としての生産性向上も困難を極めることになります。

 

 

3つ目の価値観・ゴールの多様性について。生活においては多様な価値観があり、家族の意向なども関わってくる。経済面や環境を重視する場合や、家族の介護負担を軽減することなど、ゴール設定も異なっています。

 

 

 

――アセスメントの統一が必要か。

岡本 画一的なアセスメントは、介護の質の低下を招きます。IT化が進んだ現在、アセスメントは多様であって然るべき。より専門的で高度なアセスメントが行われるべきです。

 

ところがLIFE関連の加算取得については現状、BIが基本になります。例えば、ICFステージングをBIに読み替えることが求められてくる。このBIというのは、1955年に米国で使用されるようになった手法。それから70年近くを経た今、このスケールに当てはめてくことは、アセスメントが画一的に陥るリスクを孕んでいます。一方の欧米諸国がWHOを中心にアセスメント「WHODAS2」へと進化しつつある。これにキャッチアップしないと日本の「ガラパゴス化」は必至で、世界市場を目指す際には適用範囲の再設定などが必要なことが懸念されます。

 

 

――こうした課題解決に資する研究をされている。

岡本 容態像の把握については、コンバーター(変換プログラム)によって、各アセスメント間のデータ共有を進めています。これをLIFEに送り、さらにロボットやカメラ、行動分析センサーなどから得られた連続データを統合。AIが自動判定やプラン策定による「思考支援」を行います。その結果、専門性の高い各分野での固有のアセスメントの実施、多職種間のデータ共有、LIFEの介護現場での本格活用が可能になると予測しています。

 

さらに、介護業務分類の標準化も進めています。強調したいのは、画一化を目指すのではなく、多様な介護業務を正確に把握できるような分類を策定しようとしていることです。これは、実際の業務をコード化し、業務プランや業務記録の共有を可能にしていくもの。対象者をADL別にし、介護者の動作をできる限り細かく分け、介護者の経験年数別(スキル別)に特徴を分析していきます。

 

 

――今後の取り組みは。

岡本 フレイル予防や介護予防AI、ADL改善・リハビリプラン策定AI、「寄り添う気持ち」などのADLへの影響の指標化検討など、産総研だけでなく、社会実装を具体的に進めるノバケアにおいて、大学などと協力した研究・開発を進めています。さらに、地域特性(住民意識、食性、社会資源など)が、どのように高齢者のADLや自立に影響するかの研究を、東京大学IOGと始めました。

 

また、昨年は有志とともに、「次世代ケアマネジメント研究会」という任意団体を設立。介護保険制度や障害者福祉制度の範囲のみならず、幅広く共生社会のもとでのケアマネジメントの在り方、また、進化するAI、ロボット、IoTなどの技術を活用した「次世代型」ケアマネジメントを生み出すことを目指します。

 

 

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