<連載第122回 大規模工事の説明義務>

 

世は正に、賃貸物件の大改修時代です。バブル期の建物は築30年を迎え、外壁等の大規模工事を余儀なくされる建物が後を絶ちません。

大規模修繕工事の際の要注意事項は多数ありますが、今回は、契約締結時の大規模修繕工事の説明義務について見ていきましょう。なお、かかる説明義務は、宅建業法上のいわゆる「重要事項説明」とは別に要求されるものです。

 

東京地裁平成31年2月6日判決は、大規模修繕工事の予定を契約締結時に説明していなかったとして、(1)不法行為に基づく慰謝料、休業損害、引越費用の賠償請求と、(2)錯誤無効に基づく入居費用の返還請求がされた事案において、賃貸人の説明義務と、その義務違反を認めて、請求を一部認めました。

 

(1)については、大規模修繕工事の予定は、契約を締結しようとしている者が、賃料交渉や、入居時期の調整等、契約をするかどうかを決定するのに関わる重要な情報であり、工事の予定を説明すべき信義則上の義務があると示されました。結果として、同義務違反が認定され、休業損害ないし引越費用として、30万円の請求が認められたのです。

 

(2)については、工事が専有部分に及ばず、期間も短く、居住に大きな影響はないことから、一般人を基準にしたときに、工事の予定を知っていれば契約を締結しないことが普通であるとまではいえず、原告が契約時に窓からの景色が気に入ったと述べたことは認められるが、「工事が予定されているなら契約を締結していなかった」と言える程の動機の表示はなかったとして、錯誤無効に基づく入居費用の返還請求を認めませんでした。

 

(1)の内容からは、大規模修繕工事が予定されているのに契約時までに説明しなかった場合、引越費用等の損害賠償請求がなされる可能性があります。

(2)の内容からは、もし仮に、契約時に「私はぜん息持ちで、粉塵で症状が悪化するんです」といった発言があれば、入居費用の返還が認められる可能性もあります。

 

入居後すぐにクレームが入らないよう、大規模修繕工事の予定の説明はお忘れなきようご注意ください。
可能であれば、工事の予定の有無を、契約時の不動産会社による説明事項としておくことが望ましいでしょう。

 

 

弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士

家永 勲氏

【プロフィール】
不動産、企業法務関連の法律業務、財産管理、相続をはじめとする介護事業、高齢者関連法務が得意分野。
介護業界、不動産業界でのトラブル対応とその予防策についてセミナーや執筆も多数。

 

 

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