コロナ禍での新展開

 

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、タクシー業界は苦境に立たされている。一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会の調査によると、全国の営業収入の平均は2020年7月と比べ21年同月時点で約3割減少。不要不急の外出自粛要請、イベントの中止、それらに伴う観光客の激減による影響は大きい。その状況下で、タクシー会社が高齢者のニーズに改めて注目したことにより、地域の足となる新たな動き・サービスが生まれている。

 

 

 

「八戸タクシー」(青森県八戸市)では5月から、従業員が人手の足りない介護事業所に出向して働く「在籍型出向」を開始した。
同社ではコロナ禍での事業縮小により、一部従業員の休業や、雇用調整助成金を利用するなどして雇用を維持してきたという。上野光正営業課長は「特に夜間の業績が落ち込んでいる。一方で日中の利用客は、7割が高齢者。何か貢献できないかと考えていた」と話す。

 

 

以前から交流があった医療法人すみれ会(同上北郡)が運営する「リハビリデイサービスすみれ」(同)と出向契約。在籍型出向に取り組む事業所を対象とする、厚生労働省の「産業雇用安定助成金」制度を活用して、出向が実現した。

 

 

期間は5月から1年間で、2名の従業員がデイの送迎スタッフとして活躍している。1日に5、6回、利用者の自宅とデイ間を往復し、車両点検や乗降介助も行う。1ヵ月に24日勤務とし、給与などの待遇は出向前の水準から下がらないよう設定。社会保険労務士を交え事業者同士で話し合い、決定した。

 

 

出向する従業員は、事前に一般社団法人青森県タクシー協会(青森市)が開催する車椅子の取り扱いについてなどの研修を受講。現在は、介護職員に介助の仕方や利用者の身体状況などを教わりながら勤務している。

 

 

受け入れ先のデイでは従来、送迎業務を介護職員が兼任しており、担当者の体力的な負担が大きかったという。「介護職員からは『運転の負担が減り助かる』、利用者からは『プロによる安全運転で、安心できる』との声が届く」と上野営業課長。出向した職員からは「道を覚えるのが大変だが、少しでも力になれていると感じ、働き甲斐がある」との声がある。

 

「自社の雇用契約を維持しながら、安定した場所で働いてもらうことで従業員の雇用を守れる。人手不足である介護業界にも貢献でき、大きなメリットを感じている」(上野営業課長)。

 

送迎車に利用者を案内するドライバー

 

 

 

介護施設に荷物配送 利用客の声でサービス誕生

 

町田・相模原・多摩を主なエリアとする東日本タクシー(東京都町田市)は8月から、新しい事業として「病院・介護施設便」を開始した。依頼主から受けた荷物を病院・介護施設に配送する。

 

 

タクシー事業の利用客は以前から高齢者が多かったという。「コロナ禍で面会できない状況で、病院に荷物を届けるためだけにタクシーを利用するのは負担」、「介護施設の入所・退所のたびに荷物を運ぶのは大変」という声が届いていた。堀田茂臣営業主任は、「地元の利用客に恩返しがしたい気持ちから、新事業を立ち上げた」と経緯を語った。

 

 

配送用にワンボックスの軽自動車を4台用意。エリアは町田市・相模原市内で、料金は1箱1600円。大人1人で運べる大きさであれば、大小問わない。荷物が多くなる場合、1時間につき3000円のチャーター便プランも用意している。通常のタクシーでは入らない大きな荷物や車椅子も配送することが可能。午前中に預かれば当日中に配達できる点も強みだ。

 

 

利用客からは、「コロナ禍で感染が心配だったが、大変助かっている」などの声があるという。堀田営業主任は「今後も”痒い所に手が届くサービス”の提供を目指していく」と語った。

 

車椅子など大きな荷物も載せることができる

 

 

 

観光タクシーで買い物 運転手が代行

 

俵屋観光(山梨県南巨摩郡)は、主に登山客やキャンプ場に来る観光客などを対象に、観光に特化したタクシー事業を行う。しかし現在は、コロナ禍で客足は減っている状況。新しい取り組みを考えた結果、「おつかいタクシー」として高齢者の買い物などの代行サービスを7月から開始した。

 

 

同社が営業区域とする早川町の高齢化率は約48%(2021年3月時点)。望月大輔専務取締役は「集落の多くが山の上にある。外出する際に不便さを感じる高齢者の声を聞きサービスを始めた」と話す。

 

 

代行内容は、買い物や安否確認など。基本料金は1件500円。それに加え、代行料として30分1000円(以降15分毎に500円)、商品代を追加した料金が発生する。運転手が買い物リストなどを自宅で受け取り、依頼品を自宅に届けてからその場で清算する。

 

 

高齢者だけでなく、体調不良の人、仕事や家事などが忙しい人なども利用でき、近所の住民と共同で依頼することも可能とした。筆談用のホワイトボードを用意し、耳が聞こえにくい人にもスムーズにコミュニケーションがとれるよう配慮する。「安心して代行を依頼してほしい。利用者と信頼関係を築くことに注力していく」と望月専務取締役は語った。

 

望月大輔 専務取締役

 

 

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