企業の品質ガバナンス強化を

 

ジェネリック医薬品が全国的に品薄になっている。

 

今年8月頃のことだ。著者が勤務する衣笠病院で、骨粗しょう症の患者さんにいつも処方している活性ビタミンDを処方しようとした。すると薬剤師さんから「品切れで薬が入ってきません。しばらく休薬でお願いします」と言われてびっくりした。
街の薬局でもジェネリック医薬品の品薄が起きている。「入荷待ちで患者さんに薬を渡すのが遅れた」、「先発品に変更して対応した」、「薬が入ってこない。コロナで大変なのに、これでは二重苦だ」と嘆きの声が広がっている。

 

 

なぜこうした事態になったのだろう。事の発端は2020年12月に発覚した小林化工(福井県あわら市)のジェネリック医薬品への睡眠薬混入事件からだった。これによって健康被害が起こり小林化工は21年2月に110日間の業務停止命令を受ける。

 

そして21年3月、ジェネリック大手企業、日医工(富山県富山市)の品質基準違反の75製品が回収され、32日間の業務停止となった。日医工ではこうした基準違反が10年以上も続いていたという。このジェネリック企業2社だけでも現在流通しているジェネリック医薬品の1割程度の生産がストップした。

 

さらにこの2社の不祥事を受けて業界内で自主点検を行ったところ、相次いでジェネリック医薬品企業の品質基準違反が見つかる。長生堂製薬、共和薬品工業、富士薬品などに回収騒ぎが広がっている。

 

こうしたジェネリック医薬品の出荷停止を受けて、ほかのジェネリック医薬品メーカーも増産体制に入っているが、右から左へと、そう簡単に増産できるわけでもない。またジェネリック医薬品を先発品に戻すと言っても、すでに特許の切れた先発品の80%近くまでジェネリック医薬品に置き換わっているので、先発品も品薄になっている。ジェネリック医薬品の不祥事の波がドミノ倒しのように供給網を駆け巡っている。正常化には2~3年かかるともいう。

 

ジェネリック医薬品の生産は、先発品の少品種大量生産と違って多品種少量生産だ。このため品質管理の工程数が先発より格段に多い。さらに国の推進政策のもと、ジェネリック企業は増産に継ぐ増産で対応してきていた。さらに企業の間での価格競争も熾烈で、市場に出たジェネリック医薬品の薬価もどんどん下がった。こうした中でジェネリック医薬品の品質の暗闇が拡大した。

 

国はこれまでのジェネリック医薬品推進一辺倒の政策を見直すときだ。いったん立ち止まって、ジェネリック医薬品企業の品質ガバナンス強化にギアを切り換えるべきだ。

 

 

武藤正樹氏(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役

1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長、規制改革推進会議医療介護WG専門委員(内閣府)

 

スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう