思いを言葉にできる環境づくり

 

「人生会議」(アドバンス・ケア・プランニング)とは、自分が大切にしていることや、どのような医療やケアを望んでいるかを考え、それを信頼する人たちと話し合う会議のこと。そろそろ行動しておいた方がいいのかな。

 

両親はともに戦前生まれ、80代半ばでいつ何があってもおかしくはない。母は一度決めたことは、絶対に後に引かない頑固な性格で、自分の生き方をぶつけてくる。自分の生き方、判断が正しいと一歩も引かず、余りに強気すぎて、どこまでが本音なのか、話していても正直煩わしい気持ちになってしまう。介護にかかわる私がそんなことを言っていいのか…と思うが家族介護の難しさに直面する寸前である。

 

 

昨年、妹の友人が親御さんを突然亡くし、急すぎて心の準備ができておらず、どんな最期を送りたいか、身の回りの事など何も聞かずにいたので大変な思いをした。このことから行動力ある妹は即母に問いかけた。その数日後、「突然なにかあったら困るから思いなどを聞かせて。なんてあの子が言うのよ、どう思う。私が早く死んだ方がいいと思っているのかしら」と怒り心頭で母が私に訴えてきた。あららと思いつつ、いつかこんな日がくるとは思ってもいた。

 

 

それまで母は、近くに住む妹がベテラン看護師であることで散々頼りにしてきたはずなのに、肝心な所では聞く耳を持てない。つくづく母らしいと感じつつも、こんな母にどの様に「人生会議」を行えばいいのか。もしかしてこのタイプは生への執着心が強く病院だろうが、どんな状態であろうが、「私は生きたいのよ!」と言ったりするのだろうか。それともあっさり「延命治療なんて考えてないわよ」と言うのだろうか。強気な母だから本音を言葉にはできないのか。実は老いを自覚しているからこそ素直に受け入れられないのか。

 

 

生きることは誰もが死と常に隣り合わせだ。だから私事から話してみるのも1つの方法かもしれない。例えば私は脳死の際は臓器提供を希望するとか。水にまつわる場所での散骨は避け、できるなら星空の美しい丘に散骨してほしいとか、こんな話を何気ない時間の中で繰り返しながら心の底にある思いを言葉にできる環境を作り、これから両親と私の「人生会議」を行っていこうと思う。

 

 

女優・介護士 北原佐和子氏

1964年3月19日埼玉生まれ。
1982年歌手としてデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に活動。その傍ら、介護に興味を持ち、2005年にヘルパー2級資格を取得、福祉現場を12年余り経験。14年に介護福祉士、16年にはケアマネジャー取得。「いのちと心の朗読会」を小中学校や病院などで開催している。著書に「女優が実践した魔法の声掛け」

 

 

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