長崎県五島市では、住民の高齢化の進展に対応するため、地域医療を推進している。その一環として、市の離島部の住民が島内で受診、薬の受け取りまで完結できる体制構築を目指した実証実験事業を行った。オンライン診療・ドローンなどを活用しつつ、最期まで安心して暮らせる地域の実現を目指す。

 

 

五島市の高齢化率は2021年9月時点で40%を越えている。
高齢化の進行に伴い医療のニーズが高まった。そこで課題となったのが、住民の医療へのアクセスだ。市には人口100人以下の小さな島が複数あり、医師が常駐している島は多くない。島に医師が不在の日には、医師の居る福江島の診療所や病院にかからなければならず移動に丸1日必要であった。薬の処方を受けても、島の出張診療所などにある医薬品の在庫は限られていた。

 

そのような状況から20年、国土交通省の「スマートアイランド実証実験事業」において、複数の事業者と共同でIoTを活用した遠隔診療の実証実験に取り組むこととなった。
実証期間は昨年10月から今年2月まで。対象となったのは、福江島から5㎞離れた嵯峨島(さがのしま)の住民。人口約90人で、高齢者は約40人。島には出張診療所が1ヵ所あり、毎週火曜日に医師、水曜日に歯科医師が診察にあたる。それ以外の曜日、住民は福江島の診療所や病院へと通っている。

 

遠隔診療の実施は、

①福江島の医師が嵯峨島の診療所にいる住民に対しiPadなどを利用して遠隔で診察を行う

②福江島の保険薬局に処方箋を渡し調剤。薬局職員が薬をドローンの発着場に届ける

③ドローンにより海上輸送。嵯峨島の発着場に到着後、看護師が回収、患者に渡す

④薬剤師がiPadを使用し遠隔で服薬指導を行う

――といった流れ。

事業のフロー(出典:五島市)

 

 

患者の診察を担当するのは福江島にある三井楽診療所及び、五島中央病院の医師。併せて、同島の桜町調剤薬局三井楽店、あおぞら薬局、ニック調剤薬局ごとう店が参加。ドローンの操縦はANAホールディングスが担当し、空の通信網のサポートはNTTドコモ九州支社が行った。

 

島内で診察を受けることが可能になり、医療機関にかかるまでの時間が大幅に減少。診察から薬の受け渡しまで小1時間程度で済んだ。医師からの反響について、五島市役所総務企画部政策企画課政策企画班の田道靖久氏は次のように語る。「患者の様子を映像で診ることができ、電話と比較して診察がしやすくなったという意見が挙がっています」。また、コロナ禍において感染症予防に効果を感じたという。

 

 

高齢者の見守り 安価センサーで

今年度のスマートアイランド実証実験事業では、IoTを活用した高齢者の見守りを行っている。
実験は、加速度センサーをドアに設置、24時間以上開閉されていないなど異常を検知した場合は、コールセンターから安否確認の電話を行う、というもの。センサーの通信に「Sigfox通信」という京セラコミュニケーションシステム社が提供するIoTネットワークを使用。従来の見守り機器と比較して、インターネット環境不要、LTE(携帯電話の通信規格)を使用した場合と比較してデータ通信料80%削減、電池寿命の延伸ができる。センサーの電波を受信する基地局として、海上を行き交う船を利用する点も画期的だという。

 

ドローンで処方箋を運ぶ

 

長寿介護課の野田美保氏は、「市内には独居高齢者も多いこともあり、医療機関とも連携しながら見守りネットワークを構築することに取り組んでいます」と話し、IoT機器の活用に期待を寄せる。一方で、それには「国などからの支援は不可欠」だとした。市での取り組みを積極的に発信、協力者を募りながら、「最期まで暮せる地域づくり」を進めていく。

 

 

 

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