地域包括ケアシステムの推進
令和3年度介護報酬改定における5つの分野横断的テーマの2つ目である「地域包括ケアシステムの推進」について論考します。地域包括ケアシステムの確立は、超高齢社会を乗り越える上で不可欠な概念で、議論され続けてきたテーマです。
従って、すでに確立に向けた方向性は示されており、さらなる推進がテーマとして設定されています。しかし、概念的な面も含まれており、その推進に向けた具体的な取り組み方法が見え難いという課題もはらんでいます。
そこで今回改定では「地域包括ケアシステムの推進」に向けて、具体化すべき7つのポイントが示されています。
1つめは「認知症への対応力向上に向けた取り組みの推進」です。
これまで以上に認知症対応への評価を示すため、各種の加算を拡充するとともに、今回改定の目玉の1つとして無資格の介護従事者に対して、認知症介護基礎研修の受講が義務付けられることとなります。
2つめは、「看取りへの対応の充実」であり、こちらもこれまで以上に看取りへの取り組みに対する評価を示すため、各種の加算の拡充とともに、施設サービス等で【人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン】に沿った対応が求められます。
3つめは、「医療と介護の連携の推進」です。これも従来からの大きな課題であり、各種連携を評価する加算の拡充や見直しが行われています。
4つめは、「在宅サービスの機能と連携の強化」であり、訪問入浴介護における初回加算の創設などいくつかの評価ポイントが示されました。
5つめは、「介護保険施設や高齢者住まいにおける対応の強化」であり、特養等の個室ユニットにおける定員の要件緩和が示されました。
6つめは、「ケアマネジメントの質の向上と公正中立性の確保」であり、居宅介護支援の逓減制の見直しや、通院時情報連携加算・委託連携加算による医療連携や介護予防に係る評価が行われました。
加えて、集合住宅における〝過剰サービス〞や〝囲い込み〞への対策として介護情報公表システムにおいて、より細かな情報開示と利用者への説明が求められます。次期同時改定における最大の論点の1つとなる可能性が高く、今後の議論の推移を注目する必要があります。
7つめは、「地域の特性に応じたサービスの確保」です。離島や過疎地、中山間地域等のサービス拡充を図るとともに、地域特性に応じた仕組みづくりが今後の課題となります。
曖昧模糊とした概念とも言われる地域包括ケアシステムは、認知症・看取り・医療連携等をキーワードと捉え、次期同時改定の先読みとすることが重要です。
斉藤正行氏 プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。