――第33回 リーダーシップ・シフト②――
日本には、世界の視点が届きにくい。
たとえば、ジェンダーイシューについて、次のようなデータをご存じだろうか。世界経済フォーラム(World EconomicForum:WEF)が2021年3月、「The Global GenderGap Report2021」を公表し、各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index :GGI)を発表した。指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平等、1が完全平等を示している。
順位の1位アイスランドは0.892、5位のドイツは0.796、米国は30位0.763、韓国が102位0.687、そして日本は120位0.656である。レポートによれば、日本は特に「経済」及び「政治」における順位が低く、「経済」の順位は156ヵ国中117位、「政治」の順位では147位だ。各国がジェンダー平等に向けた努力を加速している中、日本が遅れをとっていることを示している。
さらに過去50年間、女性の行政府の長は存在していないことも指摘された。女性幹部の割合についても、米国42%、スウェーデン40%、イギリスが36.8%、フランス34.6%、ドイツ29%、イタリアとオランダ27%、韓国15.6%、日本は14.7%。この数字からみても、日本はまさに女性幹部後進国である。
ジェンダーパリティ(ジェンダー公正)については、ラオスとフィリピンはすでに達成しているが、韓国と日本は、未だ18.5%と17.3%。組織の中で活躍したいと思ったとしても、グラスシーリング(ガラスの天井)にぶつかってしまい、出世することができないと説明されている。
日本の女性議員の数についても顕著である。国際的な議員交流団体「列国議会同盟(IPU、本部スイス・ジュネーブ)」では、20年に世界の国会議員で女性が占める割合は25.5%と報告されており、日本の衆議院議員の女性比率は9.9%、世界190ヵ国中166位とG7諸国では最低だった。となると、総裁選に臨む際にも女性で整えることは到底無理であり、ジェンダーや夫婦別姓などの女性に関わる政策となると、男性議員の中にはメリットがないという考え方をする人も少なくないため、推薦人集めが困難だ。
前回のコラムで、『女神的リーダーシップ〜世界を変えるのは、女性と「女性のように考える」男性である』に基づいて、女性リーダー国には、新型コロナウイルスによる死者がなぜ少ないのか、その行動や発想を例にお伝えした。先にお示ししたように、日本の女性議員が圧倒的に少ない。
女性議員の中でも女性のしなやかさで勝負するのでは弱いと考える人も少なくない。男性と同じ土俵で、「言い負かす」「罵声」「論破する」という戦い方をするのでは、女性的な資質を政治に活かすことにはならない。選挙に向けて、野田聖子氏が校長を務める女性議員を育てる塾では、国会、都道府県、市町村の選挙に臨む意欲のある人材50名を育て上げ準備をしてきたという。
「表現力」「柔軟」「忍耐強い」「共感力」「忠実」「情熱的」「利他的」という「女性的」な資質が、都道府県知事、自治体で、今まさに国民から切望される気運がある。国政においても女性性の評価が浸透し始めると、国民の政治に対する不信感や関心の高まりに変化が起きてくるのだろう。衆議院総選挙の結果を見守りたい。
小川陽子氏
日本医学ジャーナリスト協会 前副会長。国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻医療福祉ジャーナリズム修士課程修了。同大学院水巻研究室にて医療ツーリズムの国内・外の動向を調査・取材にあたる。2002年、東京から熱海市へ移住。FM熱海湯河原「熱海市長本音トーク」番組などのパーソナリティ、番組審議員、熱海市長直轄観光戦略室委員、熱海市総合政策推進室アドバイザーを務め、熱海メディカルリゾート構想の提案。その後、湖山医療福祉グループ企画広報顧問、医療ジャーナリスト、医療映画エセイストとして活動。2019年より読売新聞の医療・介護・健康情報サイト「yomiDr.」で映画コラムの連載がスタート。主な著書・編著:『病院のブランド力』「医療新生」など。