高齢者をはじめ障害者、外国人、低額所得者(月収15万8000円以下)など「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない「セーフティネット住宅」の制度が、この10月で丸4年を迎えた。登録した住宅をサ高住と同様にネット上で検索できる。

 

国交省は施行後3年半の今年3月末までに全国で17万5千戸を目標とし、すでに60万戸を超えた。だが、大東建託パートナーズという1企業が8月末時点で全体の約95%を占める。異常と言わざるを得ない。

 

同社は、上場会社の大東建託のグループ会社。同グループは地主にアパート建設を促し、竣工後に丸ごと借り上げて転貸するサブリース方式を営む。全国に約117万戸の管理物件を持つ。「国交省から協力要請があり、築15年までの約70万戸の新しい物件を順次登録している」と同社は打ち明ける。

 

検索システムにも問題がある。登録住宅にすぐに入居できるとは限らない。住人がいる物件も登録できるからだ。「空室」の項目には2万戸もない。さらに、貸主は高齢や障害などを理由に入居を断れないが、所得や保証人などを審査し入居者を選べる。
「あくまで民間住宅なので」と国交省。一律に「入居を拒まない」とは言えない。

 

問題点はあるが、制度の理念は評価したい。仕組みを巧みに活用する自治体や事業者も現れた。自治体が家賃を補助して成果を上げているのが東京都八王子市だ。
同市内で登録住宅を見つけたSさん(30歳)は「毎月の家賃支払いが1万9000円なので助かる。駅や小学校も近くて満足しています」と話す。この4月から小学校に通い出した子どもと2人暮らしである。

 

八王子市は2018年4月から、子育て世帯、なかでもひとり親世帯を対象に家賃補助を始めた。「不足する市営住宅を補完したい」と同市。市営住宅並みの家賃で入居できるよう4万円を助成する。といっても制度上、同市の負担は1万円。東京都が1万円、残りの2万円は国が持つ。家賃補助は36戸に広がっている。

 

東京都世田谷区でも18年6月にひとり親への家賃助成を始めた。「コロナ禍でひとり親の収入減や離職が増えているので、積極的に取り組みたい」と意気込む。加えて、登録した貸主に10万円の報奨金をこの4月から出し始めた。貸主へのメリットがないことが制度普及の欠陥と言われる中、自治体が肩代わりする。

 

この制度にはマンション・アパートの「一般住宅」とは別に「共同居住型」も登録できる。主に戸建て民家の子ども部屋などを個室に転用するシェアハウス型だ。社会的支援が欠かせない高齢者や障害者にふさわしい。国交省も「福祉と連携した住まい方」として推奨してきた。その典型例が東京・池袋の2階建て民家の「共生ハウス西池袋」である。

 

改修した4個室のうち現在3人が住む。食堂やリビング、風呂などは共用。一般社団法人コミュニティネットワーク協会が同制度の「居住支援法人」として入居者の生活を手助けしている。
入居者のAさんは、コロナ禍で給与が下がり、家賃を支払えなくなったため豊島区役所に相談に行き、紹介された。家賃補助の4万円と同協会からの補助金1万円が出るので、7万9000円の家賃が2万9000円で済む。

 

同協会は池袋駅近くで高齢者の居場所事業を手掛けており、Aさんはそのスタッフとして働きだした。協会理事長の渥美京子さんは「住まいと一緒に働く場やケアサービスも視野に入れていきたい」と話す。

 

シェアハウス型はまだ92棟、900戸と少ない。「住まい」は地域包括ケアの土台でもあり、セーフティネット住宅の普及が急がれる。

 

 

浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

 

 

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