特定非営利活動法人日本ホスピス・在宅ケア研究会(兵庫県神戸市)の第28回全国大会が10月16〜17日の2日間にわたり開催された。会場となった熊本グランメッセ(熊本県上益城郡)は、16年4月に起きた熊本地震で最も被害の大きかった地域の1つである益城町で、避難所として地域住民を支えた場所。被災者ながら地域の災害支援を担い、介護事業経営者として要介護の高齢者にケアを提供し続けたせせらぎ(同)の高橋恵子代表が大会長を務めた全国大会の様子をレポートする。

 

登壇者とボランティア

 

 

初のハイブリッド開催となった今回、参加総数は約600人。蘆野吉和理事長は、「かつて医師が主になって話していた〝死〞を市民と対等に話し学んでいこうと始まったのが本研究会。医療、介護、行政そして市民の連携が重要」と挨拶を述べた。

 

30以上ものプログラムは、「私自身が学びたいと思えるものを詰め込んだ」と高橋大会長が評する通り、生と死を考える、災害、認知症、神経難病、がんのケア、アドラー心理学など多岐にわたる。参加者も登壇者も、患者本人、医療職、介護職、ボランティアと、職種や団体の垣根を超えた顔ぶれとなった。
「先生という言葉は使用しない約束。使用するごとに募金箱に100円入れる」ルールも、共に学び合う気持ちを後押しした。

 

 

専門性を強みにし 専門を超えていく
初日には、障害者の権利実現の専門家として活躍してきた国連アジア太平洋経済社会委員会社会問題担当官秋山愛子氏が登壇。「インクルーシブ/まぜこぜ社会は社会成長のエンジン〜なぜ・どうして・どうやって?〜」と題し、講演を行なった。秋山氏は、「障害者というと福祉の範疇で考えがちだが、お金の流れを変えることもできる。国連では公共調達法改正を支援し、タイでは入札業者がバリアフリーな商品、サービスをつくる仕組みができた」と話し、まぜこぜ社会が成長のエンジンになる好事例を紹介した。

 

 

次いで、横山俊祐大阪市立大学名誉教授が座長を務めた『自分らしく生きるためのケア環境とは? 』では、末期癌で大会直前に旅立ったGH「ヒューマンケア富合」の前川春美氏に代わり、高橋大会長が登壇。

高橋恵子大会長

 

「どんなことでも相談できる医師の存在が闘病の支えだった。新型コロナにより家族の面会もない入院生活は、彼女のように自己実現に満ちた日常を送る人でさえ不安。患者にとって療養生活の不安に寄り添う専門家の存在は大きい」と前川氏を追悼した。

 

 

同プログラムでは、「ケア環境というと、効率や適切な介護、介護空間という捉え方が主になりがちだが、本人らしく生きるためにケア環境をどう考えるか。生活を楽しむための検討が求められる」と提起がなされた。

 

 

大会2日目は、教育講座『その人らしさとは何か 認知症を脳科学する』と題して、脳科学者の恩蔵絢子氏が登壇。「アルツハイマー型認知症は、新しく物事を覚えることに困難を抱えており、自我が脅かされている状況だが、それゆえにその人らしさがくっきり見えてくる。

 

 

例えば料理人が料理をできなくなることはその人らしさを失うことに等しいかもしれないが、サポートすればできることは無限にある。どの程度サポートが可能で、サポートすべきか。本人と周囲の自尊心を守ることにより、人は幸福を見出すことができる」と、認知症の母を介護する実体験を交えながら脳科学者の視点から語った。

 

 

「在宅ホスピス・看取り推進フォーラム」では、慶應義塾大学の堀田聰子教授が登壇し、コロナ禍でも目の前にいる人の思いや人生を中心にしたケアを模索し続けた全国の事業所の事例を紹介。続いて、地元熊本の登壇者からそれぞれの取り組みが紹介された。「課題が山積みだからこそ課題解決ではなく、あったらいいなの妄想から始める」との堀田氏の言葉は、2025年問題、40年問題を考えていく上でも示唆に富む。

 

 

「New normalの時代に、〝困った〞を抱えた地域の人たちを支えていくために、人と人のつながりを再確認できる大会に。そして、震災でお世話になった人たちにありがとうを伝えたい」との思いの詰まったアットホームな大会は終了。22年10月の奈良大会へとバトンが渡された。
なお、大会プログラムは、来年3月まで500円で視聴可能。問合せは大会事務局へ。

 

 

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