特養併設ショートステイの魅力向上を
前号で「在宅サービスの新規利用者を獲得しやすい時期」は春と秋だとお伝えしました。11月まではギリギリ収穫の時期。夏にまいた種が実るシーズンでもあります。
新型コロナウイルス感染者も激減しています。このチャンスを逃すことなく、徹底的に稼働率を上げて冬に備えましょう。
■特養は競争の時代に
先日、ある特別養護老人ホームの施設長から「稼働率が90%を割り込みそうだ」と相談がありました。逝去や入院のために退所した方の空きベッドがなかなか埋まらないというのです。
特養で稼働率80%台というのは問題です。もともとは常に待機者が100人以上いたのですが、周囲に特養2ヵ所が新たにオープンしたことで、かなりの影響があったそうです。本連載で何度もお伝えしていますが、特養はすでに競争の時代に突入しています。マーケティングの発想で、見込み客を発掘していかなくては、安定した経営は難しくなるでしょう。
■併設ショートステイを活用する
ここからのお話は、お年寄りを無理やり「型」にはめるという意味ではありませんので、ご理解ください。あくまで利用者のニーズ第一です。その上で以下のことを実行していただきたいと思います。
この特養に私がアドバイスしたのは、併設するショートステイ(空床利用も含む)を徹底的に売り込むことでした。ショートステイを特養の〝体験宿泊機能〞とみなして、ご利用いただいた方をファンにする戦略です。そのためには、2つの客層が必要となります。
ミドルステイの客層は、病院からの退院直後で在宅復帰がまだ厳しい方や、特養の待機者となります。入所にもっとも近い客層だと考えて良いでしょう。
しかし、この客層だけでは、見込み客は充分ではありません。より多くの方々にご利用いただき、見込み客を増やす必要があります。そこで、地域の居宅に対して、ショートステイ(短期利用)を徹底して訴求するのです。
つまり、図の顧客ピラミッドで言うと、ショートステイで利用者とのお付き合いがはじまり、その何割かがADLの低下とともにミドルステイに移行し、最終的には特養に入所するイメージです。
■ショートステイの「商品化」
ショートステイが、ただの〝預かり〞になってしまっていては、いまの時代、なかなか利用者を獲得できません。ポイントは3つあります。
①ADLが落ちない
担当ケアマネジャーや、他に利用している在宅サービスの事業者が最も嫌うのは、ショートステイを利用するとADLが落ちて帰ってくることです。日中の活動時間を多くして、ADLが落ちない施設を目指しましょう。
②空き状況がすぐにわかる
問い合わせしたときに、即答できない事業者はアウトです。ベッドコントローラーを任命して、常に利用状況を把握できるようにしましょう。仮に空いていなくても、近い日程で提案することが重要です。
③外気浴・レクなどの楽しみがある
ご利用者にファンになっていただくためには、魅力的な日中活動が必須です。散歩、外気浴などは人気です。2〜3日の利用で、1度は必ず魅力的なイベント、レク、活動に参加できるように日中活動を見直しましょう。
ミドルステイとショートステイの客層を同時にサポートするために、それぞれの入所割合(定員)を決めておくと良いでしょう。また、新規利用人数(はじめて利用する方)の月間目標を立てて、より多くの方に利用していただき、特養の見込み客化を促進しましょう。
糠谷和弘氏 代表コンサルタント ㈱スターコンサルティンググループ
介護事業経営専門のコンサルティング会社を立ち上げ、「地域一番」の介護事業者を創り上げることを目指した活動に注力。20年間で450法人以上の介護事業者へのサポート実績を持つ。書籍に「介護施設帳&リーダーの教科書(PHP)」などがある。