読売の「過剰介護論」に疑問

 

読売新聞が10月18日に「『囲い込み』横行」、11月3日に「不適切なサービス提供」とサ高住の問題点を指摘した。

 

10月18日の紙面は、都道府県など129自治体へのアンケート調査から、「過剰な介護サービスを使わせる『囲い込み』を把握している自治体」が51もあったという。だが、コロナの影響や人手不足のため立ち入り調査が十分でないと訴える。

 

11月3日の紙面では、低家賃で生活保護受給者を受け入れる事業者が、「採算をとるためには囲い込みはやむを得ない」と実態を吐露。事業者の思い通りのケアプランを書かざるを得ないケアマネジャーの談話もとりあげる。

 

両紙面とも「利用限度額ぎりぎりのサービスを使う」ことは不適切としているが、疑問である。利用者には受給権がある。多くのサービ利用が不適切というなら、要介護認定を見直せばいい。限度額まで使うこと自体は介護保険法上、問題はないはずだ。

 

10月27日の読売新聞はセーフティネット住宅の現状を紹介した。ほとんど実現していない家賃減額や改修費の補助など制度を羅列。最後に空き室が少ないことを指摘し、「登録物件を増やすことが求められる」と言うが、その直前に「登録総戸数は増加基調」とあり整合性がない。1人の有識者に頼った紙面構成だが、記者が取材すればいいのに、と思う。

 

「認知症の人 不動産売買に壁」と報じたのは11月8日の読売新聞。壁を乗り越える解決策として、「任意後見制度と家族信託」を並べる。だが、両者には大きな違いがある。家族の枠組みを超えて当事者本位なのが後見制度。家庭裁判所の管理下で動く。家族に頼る民間契約とは異質だ。

 

一方、朝日新聞のいい記事が目を引いた。10月13日に「大手SOMPO系、介護職1000人 年収50万円増」と報じた。来年4月に介護職の年収を看護師並みの450万円程度に引き上げるという。岸田政権の目標を先取りした注目すべき決断だ。

 

10月22日には「ヘルパー不足 家族に負担」という見出し。コロナによる訪問介護の利用控えで事業者の苦境は深まり、そのつけは介護離職の増加につながると指摘する。

 

10月28日は「外国人の働き手 どう頼る」「『特定技能』、保護は不十分なまま」と新制度の欠陥を論じた。技能実習よりレベルアップしたはずの特定技能だが、現場では働き手のハードルがまだ高いという。

海外の動向もすくいあげる。10月31日の中国、11月7日のオランダ。それぞれ高齢者介護と公的扶助の新しい動きを追いかけた。

 

 

浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

 

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