日本でかかりつけ医の制度化の議論は、今から34年も前の1987年に当時の厚生省に設けられた「家庭医に関する懇談会」(以下、家庭医懇)からスタートする。この家庭医懇は有識者や日本医師会(以下、日医)の幹部で構成されて、米英の家庭医を念頭に議論が行われた。しかし家庭医懇は、日医の大反対で失敗に終わる。理由は、日医が「(厚生省が)、イギリスの家庭医(GP)のような国家統制の強い仕組みに変えるのではないか?」と大反発したためだ。

 

 

こうして我が国では家庭医構想はとん挫し、その後「家庭医」という言葉も使われなくなり、日医の「かかりつけ医」が定着する。実は著者もこの頃、旧厚生省の留学でアメリカの家庭医留学を経験した。しかし家庭医懇の失敗のおかげで帰国後、「家庭医で留学しました」などとは口にすることもできず、留学経験も全く活かすことはできなかった。

 

 

さてこの間、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなど先進各国では家庭医制度が普及する。フランスでもかかりつけ医制度が2004年から始まる。日本とフランスはよく似ている。日本と同様、社会保険を採用する国で、医師会が強く、保険者が弱く、官僚が強い国だ。そして患者は自由に医療機関を選べるフリーアクセス制の国だった。しかしこのフランスにおいてさえ、かかりつけ医制度が導入され、かかりつけ医への登録を国民に義務付けたのだ。

 

 

ただフランスの場合、ゆるやかな登録制を採用した。かかりつけ医としては診療所の医師のみならず大学病院の専門医も登録可能だ。またかかりつけ医を経由しなくとも小児科、精神科、産婦人科、眼科、歯科は直接受診できる。ただその他の科の専門医を受診する場合、かかりつけ医を経由しないと7割という高い自己負担が科せられる。

 

 

そろそろ我が国でも冒頭の「かかりつけ総合医」の提案にあるように、かかりつけ医を登録医制とし、報酬体系にも登録人数に応じた包括報酬も加えてはどうか?その場合、フランスのような緩やかな登録医制としてはどうか?さらにコロナを契機にかかりつけ医が感染症に対応する公衆衛生医としての役割も担うこととしてはどうか?

 

 

武藤正樹氏(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役

1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長、規制改革推進会議医療介護WG専門委員(内閣府)

 

 

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