朝日は「厚労省ルール違反」に

 

読売新聞が2021年12月6日の夕刊で「アビガン不適切処方」「千葉の公立病院 自宅療養90人に」とスクープ、他紙が翌日の朝刊で一斉に追いかけた。いずれの見出しも「不適切処方」だが、朝日新聞だけは「厚労省ルールに違反」とした。

 

厚労省は入院患者への処方は認めており、自宅療養者だから「不適切」だと判断したようだ。処方した医師は保健所や病院長の了承も得ており、朝日新聞は「急変時にも処置できる態勢を整え、入院と同じ扱いだった」と話す医師の考えを掲載。東京新聞も「患者の同意があれば違法ではない」と記す。

関係者は是認しており、厚労省に知らせなかっただけのようだ。医師の英断かもしれない。「不適切」でなく、「厚労省ルール違反」とした朝日の判断を良しとしたい。

 

 

話題の科学的介護を11月29日からの3回連載で取り上げたのは読売新聞。送迎計画や介護記録の作成、栄養状態や転倒を防ぐ歩行の把握などを数値データや人工知能(AI)の活用で効率的に対応ている現場の事例を紹介した。
人手不足への対処法として機器の導入には納得いくが、費用に触れてないのが残念だ。また、単なる機器の活用を「科学的」として括るのは性急だろう。

医療には科学的対処が必要だが、生活支援の介護は10人10色の向き合い方が欠かせないはずだ。

 

 

朝日新聞が11月30日と12月1日に介護保育職の給与問題を報じた。

SOMPOケアの賃金引き上げと岸田政権の3%アップ策について、現場の介護者や労働組合など4人の担当者へインタビュー。介護業界の最大の課題だけに継続した紙面づくりを期待したい。

 

 

「生活保護拒み 姉に手かけた」「年金10万円施設はいる余裕なく」(朝日新聞)、「84歳姉殺害 82歳猶予判決」(産経新聞)。12月3日の両紙が大きく取り上げた。
朝日新聞は「対象世帯 受給は2~4割」と解説記事で生活保護の問題として切り込んだ。適切な紙面づくりだ。

 

 

12月8日の日本経済新聞は珍しく論説委員が介護業界の「生産性」について論じた。
ロボットなどデジタル化に熱心な東京都大田区の社会福祉法人、善光会の現場を紹介し、その努力が介護報酬に反映されない制度の欠陥を指摘。「ロボットを人員とみなして介護報酬を支払う発想が必要」と訴える。

 

 

大ニュースになった認知症新薬について、日経は11月19日に「割れる評価 欧州で黄信号」と報じた。日本での承認に影響するか、注目される。

 

 

浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

 

 

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