先日、上海市の長寧区仙霞社区(社区=コミュニティ)に高齢者向けの食堂がリニューアルし、再開を果たした。2007年にオープンした当時は市内では初の地域食堂として大変注目を集めた。高齢者だけではなく、一般住民にも開放していたが、物価や地価の高騰により、経営困難となりやむなく閉店となった。当時は今のように政府からの支援がなかったのである。

 

急速に高齢化が進む上海では近年、政府は在宅介護の力強い支援として、「社区食堂兼配膳センター」の整備を進めている。民間企業に委託するかたちで、徒歩15分圏域に整備することを目標としている。

上海では現在約1000ヵ所あり、毎日約10万人の高齢者が利用している。政府関係者は、「おしゃべりをしながら、食事をする〝共食〟は、心身ともに良い影響を与える」と地域食堂の魅力を語る。

食堂では、テイクアウトや宅配サービスも行っている。中国では冷ご飯を食べる習慣がないため、宅配の際には、保温状態で届けられる。これが老夫婦や一人暮らしの高齢者から、大変歓迎されている。

 

冒頭に述べた仙霞社区食堂の周辺は、昔ながらの住宅街で、住民の42%にあたる約2万9000人が60歳以上の高齢者である。そのうち独居高齢者は約1割を占めており、高齢化した上海の典型的なコミュニティの事例と言える。

食堂の面積は500平米で、厨房、食事コーナーなどがある。一日三食、約800食を提供する。朝は、麺類やおかゆ、点心などがあり、昼と夜は家庭料理を中心に約20品以上のおかずが日替わりで用意されている。
高齢者の口に合うように、塩分や油を控えめにしたメニューを心掛けている。葱豚レバー炒めや豚の角煮はすぐに売り切れてしまうほど一番人気。昼の利用者が一番多いため、10時過ぎには、すでに列をなす盛況ぶりだ。

 

マスコミの取材に対して、男性利用者は、「近所でこの食堂が話題となっているから、様子を窺いにきた。味が良くて品数も多い。今日は、五目野菜炒めやキノコ・肉炒めなど3品を注文したら、わずか20元(約340円)で、とても満足!」と嬉しそうに話した。

 

 

最近、政府が場所を無償提供し、民間の飲食企業を誘致して、食堂の運営を行うスタイルが主流となっている。現在は、上海以外にも各都市でもこのような取り組みが展開されている。

 

王 青氏
日中福祉プランニング代表

中国上海市出身。大阪市立大学経済学部卒業後、アジア太平洋トレードセンター(ATC)入社。大阪市、朝日新聞、ATCの3社で設立した福祉関係の常設展示場「高齢者総合生活提案館ATCエイジレスセンター」に所属し、広く「福祉」に関わる。2002年からフリー。上海市民政局や上海市障がい者連合会をはじめ、政府機関や民間企業関係者などの幅広い人脈を活かしながら、市場調査・現地視察・人材研修・事業マッチング・取材対応など、両国を結ぶ介護福祉コーディネーターとして活動中。2017年「日中認知症ケア交流プロジェクト」がトヨタ財団国際助成事業に採択。NHKの中国高齢社会特集番組にも制作協力として携わった。

 

 

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