不可分な「自立支援と重度化防止」

 

引き続き、2021年度介護報酬改定から24年同時改定の読み解きにつなげるため、今回は、5つの分野横断的テーマ『③自立支援・重度化防止の推進』について論考致します。今後の報酬改定の要とも言えるテーマです。

 

 

 

「自立支援」という言葉は介護保険制度の目的でもあり当たり前のこととして捉えられていますが、それでもまだまだ誤解も多いです。

「自立支援=機能訓練・ADLの改善」というような矮小化した捉え方をされている方の中には、「自分達の事業所では、認知症ケアを中心にしている。重度な方を中心にターミナルに注力している。従って、自立支援はあまり関係がない」と誤った認識を持ってしまっている方も多いです。

 

テーマの通り、「自立支援と重度化防止」がセットとされています。高齢者の状態改善のみにフォーカスするのではなく、「現状を維持すること」「重症化の進行を緩やかにすること」を含めた広義の意味での自立支援・重度化防止であり、全ての高齢者、要支援高齢者、要介護者に対して取り組むべき必要な考え方であります。

 

さらには、ADLのみならず、口腔機能や栄養状態、認知機能など、高齢者の機能全般に対する総合的な自立支援・重度化防止を実現し、最終的には生活視点でのQOL向上を目的としています。従って、全ての介護事業者が向き合っていく必要があります。

 

 

具体的には、3つのポイントが示されています。

 

1つめは「リハビリテーション・機能訓練・口腔・栄養の取組の連携・強化」であり、高齢者の状態へのアプローチを一体的に進める方向性が示されています。各種の加算における計画書や書式の一体化が見直されることとなりましたので、いずれは書面の一体化のみならず加算自体が統合され、一体的な取組を行わなければ加算算定できなくなる可能性も見据える必要があります。

 

2つめは「介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進」です。今回の最注目である科学的介護情報システム『LIFE』の導入と加算の創設をはじめとして、介護保険制度の新しい方向性が示されました。

 

3つめは「寝たきり防止等、重度化防止の取組の推進」であり、施設に対しても『褥瘡マネジメント加算』『排せつ支援加算』が拡充され、『ADL維持等加算』の拡充とともに、アウトカム評価のさらなる推進が中重度の要介護者に対しても導入されました。

 

 

2024年同時改定は大改革となることが予測されており、介護事業者は変革への備えが必要です。その重要なテーマの1つが「自立支援・重度化防止」であることは間違いありません。

 

 

 

斉藤正行氏 プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。

 

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