特養やグループホームなどを運営する社会福祉法人やすらぎ会(奈良県天理市)は、不動産業者と連携し住宅確保要配慮者(高齢者、障害者など)の住まい探しを無料で支援。成約に至るまでの調整から、転居後の生活サポートも行う。
この取り組みは、厚労省の「低所得高齢者等住まい・生活支援モデル事業」として2014年から3年間実施し、現在も国交省が進める「居住支援法人」として、支援を続けている。
事業の背景として、自宅の老朽化などで転居を希望する住宅確保要配慮者に対し、家賃滞納や孤独死の懸念などから、不動産業者が入居制限をする実態がある。
同法人では、そのミスマッチを解消すべく、相談者から生活状況や保証人、金銭面などを詳細にヒアリングし、アセスメントを行う。情報を不動産業者に共有し、内見や契約時にも立ち会い、入居後も生活支援をすることで、不動産業者の不安を解消していく。
事業担当の吉田真哉氏は「相談者の課題を明確化し、『支援プラン』を作成する。不動産業者はプランを見ることで、転居者がどのような介護サービスや支援を受け、自立した生活が可能かわかり、貸す安心感を得ることができる」と話す。

事業担当 吉田真哉氏
支援は多岐に渡り、入居前は、契約時に必要な携帯電話の契約の立ち会いや財産管理委任契約の支援、介護認定申請など総合的にサポート。入居後も、定期訪問や配食サービス(1食400円)、緊急通報装置の設置(月額1600円)などで生活を支援する。
法人では事業を始めるにあたり、宅地建物取引士の資格を持つ職員を1名雇用し、計2名で対応。不動産業者やケアマネジャー、家族などと情報共有を行いながら支援を進めていく。
事業を地域住民に周知するため、高齢者の通いの場や市役所などに足を運び、チラシを配布。不動産仲介業者へのアプローチとしては、宅地建物取引業協会に登録する業者を回り、現在8店舗と契約している。「信頼関係を築くことで不動産業者からの相談も多くなった」と吉田氏は話す。今までの相談件数は150件で、うち45件が成約したという。

転居希望者との相談の様子
なお、事業にあたっては、委託元の天理市より14年から3ヵ年で計1174万円の補助を受けた。現在は国交省の「共生社会実現に向けた住宅セーフティネット機能強化・推進事業」での補助を受けている。
「社会福祉法人としての機能を活かし、地域資源とつなげながら取り組んでいきたい」と吉田氏は話した。